イギリスの巨匠 マイク・リー監督作品
法律違反であると分かっていながらも、貧しい女性のために堕胎の手助けをしていた一人の女性がたどった数奇な運命を描く
『4ヶ月、3週と2日』ともかなり近しいテーマで本作は施術する側の視点から描かれ、淡々としたストーリーでも非常に見応えもあり、深く考えさせられる映画だった
何が正しくて何が悪なのか
堕胎というのは非常に難しくセンシティブな問題だけど、結果としてこんなことがまかり通るのはいくら何でも腑に落ちない
この場合は悪とは言いたくないけど、必要悪というものは確かに存在していて、困っている人を放っておけない根っからの善人で底抜けの優しさをもつ主人公ヴェラ・ドレイクは、法に触れてしまういけない人助けを無償で行い、数え切れなほどの女性を救ったという事実もある
そしてどうしても堕胎という選択をせざるを得ない女性も沢山いたという現実を直視できなかった、当時の社会への問題提起のような作品
そんな非常に重たいテーマを扱いながらも、時折挟まれる温かく微笑ましい描写もあり、それが皮肉にも後にくる展開にじわじわと効いてくるのでなおさら観ていて辛い
ラストカットもかなり強烈だったなぁ…
富裕層との対比もお見事ながら、緻密な日常描写を描きながらリアルに静かな家族の生活感を捉え、多くを語らずとも繋がっている深い深い夫婦の愛にもグッとくる
なにより、ヴェネチア国際映画祭で主演女優賞を受賞したイメルダ・スタウントンの泣きの演技がとにかく凄まじい…
クローズアップが多用される中、シーンに毎にその表情ひとつで全ての心情を物語ってしまう圧巻のパフォーマンスで抜群の説得力を持たせる
間違いなく彼女の名演技なしでは語れない作品
金獅子賞も納得の素晴らしく重厚な社会派映画でした
〈 Rotten Tomatoes 🍅92% 🍿84% 〉
〈 IMDb 7.6 / Metascore 83 / Letterboxd 3.9 〉
2021 自宅鑑賞 No.178 GEO