B5版

世代のB5版のレビュー・感想・評価

世代(1954年製作の映画)
3.2
アンジェイワイダ抵抗三部作の一作目。

一作目は二作目以降の祖国への志や仲間への弔いを意識した作品とは少し様子が異なる。
政治活動は若者の病と表し、煌びやかに見えた闘争に身を委ねてきたら、いつのまにか深部に染まっていく若者の行き場のない熱量や危うさが全面にでた作品だった。

死が気軽に路傍に横たわる時代、
目的もないまま生命のエネルギーを持て余した若人にとって政治活動は、はじめ一体感による高揚や力を誇示する手段に過ぎなかった。
しかし仲間内の意地の張り合いのチキンレースの末に強大すぎる"おもちゃ"まで手に入れた時、事態は殺人まで発展する。

日本にも太宰かぶれという言葉があったように、思想に傾倒することは珍しくない。
けれど時代は彼らに思想に殉ずる身体を要求した。

皆当たり前に抵抗運動以外にも、生きるための生活があった。
都合のいい時だけレジスタンスで、うまみがなければ無力な小市民を名乗るヤシオのような人が大半だったと思う。
だが思想は若者を変えた。
流れで人を殺し、なし崩しに敵に立ち向かい英雄になったもの、そして命を尽くした英雄は消えていく。
無邪気な抵抗の暁に、ポーランドに輝ける未来があったのかは、歴史がすでに知っている…

他2作に比べると話運びがやや途切れ途切れな印象はあるが、29歳の若者の撮ったエネルギッシュな作品だった。
B5版

B5版