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ヘンリーの消費者のネタバレレビュー・内容・結末

ヘンリー(1986年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

実在した連続殺人犯、Henry Lee Lucasの日常を描いたという作品

快楽殺人を犯すサイコパスにとっては事を終えたら死体はもうゴミの様な物で何の意味も成さない
そんな話を聞いた事がある
本作の序盤、過程は描かれず全てが終わった後の死人が淡々と連続して映される様はまさにそれを生々しく感じさせる物だった

娼婦の母に性的虐待を受けた事によって精神病質者となり母を殺した事をきっかけに殺人を重ねていく様になったヘンリー
その一方で普段の彼は紳士的で共感能力も高い様に見受けられた
それすらも演技なのかもしれないが純粋なエンタメとして創作されたスラッシャー作品とは一線を画した狂人もまた人間なのだ、という描かれ方が良かった

刑務所で出会い友人となったオーティスも目の前でヘンリーが2人の娼婦を殺した事から狂気に目覚め彼に引っ張られる様に暴走していく
そして一線を越えて妹を犯してしまうがヘンリーにそれを発見され殺される
彼女は出会った時から粗暴な兄とは違い紳士的なヘンリーに惹かれていてヘンリーもまた彼女を愛していたかの様に見えた
しかしオーティスの遺体を処分し、共にその場を逃げる過程で彼女もまたヘンリーに殺され捨てられる
自分の価値観と計画の通りに事を運ぶ事が何より重要でその邪魔をする物は排除する
そうしたサイコパスの狂気を強く感じさせられる最後だった

過剰に酷く描かれる事も美しく描かれる事もなく彼の”日常“の一部として当たり前の様に殺人が映されるからこその冷淡な狂気が感じ取れて面白かった
そこには否定も肯定もなくただ事象としての殺人が映されるのみ
切迫感や恐怖を煽る様な描写や展開がないままただただ狂気が繰り広げられる興味深い作品だった
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