140字プロレス鶴見辰吾ジラ

キャスト・アウェイの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
4.0
【浦島太郎】

時間にうるさい仕事人間が不幸にも飛行機事故で無人島に流れ着く。バレーボールを友達に彼はサバイバルをし生きる苦痛を真に受け脱出を決意する…

と、王道展開かと思えば奥行きのあるヒューマンドラマ。前半~中盤以降で無人島生活~脱出、中盤~クライマックスは彼の帰還後を大胆に描く。そこは冒頭で述べた寓話の終幕のハッピーエンドでなく、ビターな味を噛みしめ新たな道を見つけるエンディングだ。このエンディングは決してバッドエンドでなく、時間に厳しく仕事に打ち込む愚か者側だった男が、無人島生活を経て空白となってしまった自分の不在期間に流れた“時間“を受け入れ、過去に捨て新たな時間の流れを探すまでの寓話なのだ。ロバート・ゼメキス節というか、彼の映画の質感や独特の肌触りの強度である。ここで「キャスト・アウェイ」というタイトルの秀逸さに驚く。

主演のトム・ハンクスは流石の表現力で、特にバレーボールに顔を描いたお手製の友達であるウィルソンとの会話シーンは、無人島生活という主人公以外の不在をカバーして有り余る。ウィルソンとの別れに本当の友を失うような悲痛さに目頭が熱くなったのは私だけではないだろう。