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キャスト・アウェイのsanshokuのレビュー・感想・評価

キャスト・アウェイ(2000年製作の映画)
3.8
この映画を「人生」という言葉以外で言い表せない自分の語彙力にはうんざりする。何か良い言葉がないかと脳味噌をフル回転させたが、脳内で井上陽水の「夢の中へ」が流れ出してから考えるのを諦めた。今日は全く思考がまとまらない日なのかもしれない。

無人島に漂着したら、まず私は足元をどうにかするのではないかと思う。飛行機で靴を履いていないのをしっかりと見逃さなかった私は「まず靴に代わる何かを探さねば」と不安で仕方なかった。「ほら言わんこっちゃない」と血が滲む海水を見て目を背ける。痛々しくてデンジャラスな描写が多く思わず声を上げてしまう。人間は生身で自然に対する時、常に無力で無防備であることを思い知らされる。

次に私なら、漂着した荷物を直ぐに開けてしまうと思う。ここが主人公チャックと私の差なのかもしれない。はじめは何故荷物を直ぐに開かないのか謎だった。それはチャックが無人島に漂着してもなおプロとしての仕事を諦めていないからだったのではないかと思う。そんな生き方はしんどいだろと思う反面、その諦めの悪さが生存確率を上げたのではないかと考えてしまう。だいぶ良いようにこじつけられたのではないだろうか。

4年という歳月は長い。その歳月を実際のものだと感じさせるトム・ハンクスの肉体改造には驚かされた。劇中でここまで体形が変わる俳優は初めてかもしれない。

人は時の流れの中で息をしている。時の流れの中で漂い、様々なものと出会い、別れていく。それはバレーボールの親友かもしれないし、優しいクジラや最愛の恋人かもしれない。別れは辛い。身を引き裂かれる思いだ。ただ、可能性は広がっている。それは大海原、もしくは広大な大地のように。そう信じたい。

この映画は心情の機微を丁寧に描いている。しかしながら、その丁寧さが少しスローテンポに感じてしまった。
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