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凶人ドラキュラのMOCOのレビュー・感想・評価

凶人ドラキュラ(1966年製作の映画)
2.5
「最期にドラキュラが目撃されたのは・・・10年前だな。
 兄上はドラキュラ復活の生け贄にされたのだろう」


 チャールズとダイアナの夫婦と兄夫婦のアランとヘレンの4人は、旅行途中出会ったクラインバークのサンドー神父にカールズバッドの城には立ち入ってはならないと警告されたのですが、馬車の御者が夕刻に城に近寄ることを拒み城付近の停留所に下ろされます。
 そこに突然御者のいない馬車が現れ4人は馬車に乗り込みます。馬車は言うことを聞かず、勝手に城に向かい、4人は誰が用意したとも解らない4人分の食器が置かれたテーブルに着きます。
 すると城の召使クローブが現れ「亡き城主の言いつけで、いつ誰が訪れてもお招きするように言われている」と食事でもてなされます。
 その夜アランはクローブに殺害され、その血でドラキュラ伯爵が復活し、早速ヘレンが毒牙にかかってしまいます。城はドラキュラの城だったのです。 

 翌朝、兄夫婦が行方不明になったことを知ったチャールズは一旦ダイアナを停車場付近の小屋に届けると一人城に戻り兄の無惨な遺体を発見します。ダイアナはクローブに騙され城に連れ戻され二人はドラキュラ伯爵と吸血鬼となったヘレンに襲われるのですがダイアナの十字架のネックレスに救われ、城を抜け出しサンドー神父の僧院へ避難します。

 チャールズとダイアナを匿った僧院は吸血鬼の侵入を防ぐために部外者の立入が禁じられます。吸血鬼は招かれなければ家の中にはいることはできないのです。  

 ドラキュラ伯爵とヘレンは棺に入りクローブが操る馬車で僧院にやって来るのですが僧院に立ち入ることが出来ないため、院内にいる記憶喪失のルドヴィクを操り院内に招かせるとダイアナを狙います。

 クローブとドラキュラ伯爵に拐われたダイアナを追ってチャールズとサンドール神父は古城へ向かい、夕刻馬車に追いつきクローブを撃ち殺すと馬車は暴走し、ドラキュラ伯爵の入った棺は城の影になる凍てついた堀に滑り落ちていきます。陽が暮れ始めチャールズと争うドラキュラ伯爵に向けたライフルの銃弾は、ドラキュラ伯爵には当たらず、ドラキュラ伯爵が立つ氷にヒビが入り恐怖におののくドラキュラ伯爵の表情を見たサンドール神父は銃弾を氷に打ち込み、ドラキュラ伯爵はもがき苦しみ水中へ沈んでいきます。

「吸血鬼ドラキュラ」(レビュー済み)の大ヒットでドラキュラ伯爵のイメージが定着することを恐れたクリストファー・リーは第二作「吸血鬼ドラキュラの花嫁」(レビュー済み)の出演を断ったのですがこの第三作「凶人ドラキュラ」で再びドラキュラ伯爵を演じ、以降ドラキュラ伯爵を演じるのですが、吸血鬼ハンターのピーター・カッシングはこの作品から出演がなく、暫くドラキュラ映画から遠ざかります。

 ハマープロダクションのドラキュラ映画第一作『吸血鬼ドラキュラ』のラストシーンからの始まりは、正当な続編を印象付けられるのですが、完成した作品が規定の上映時間に足りず、時間調整のために後付けされたお粗末なご愛嬌です。

 もともとハマーのドラキュラ映画は吸血鬼ハンターの行動が不信で、真っ昼間にしなければならない吸血鬼の退治をわざわざ夕刻に行うために間に合わなかったり、吸血鬼が既に何度も血を吸いに来ている犠牲者を守るのに人を配置せず「ニンニク」や「十字架」を置いていくだけだったりとか、未然に防げることが平然と起こるお粗末なストーリーの上、闘いのラストはあまりにあっけないのです。
 この映画は二組の兄弟夫婦の能天気ぶり(兄嫁だけはまともに近い人)に始まり、ストーリーの矛盾は果てしなく続き、聖水でもない水に沈んでいくドラキュラ伯爵の最期は緊張感もなくむしろアゴが外れそうなくらいあっけにとられる終わり方です。

 ハマープロダクションの映画は、子供の頃に観た怖さは微塵もないのですが、こんなお話でも子供のときはハラハラドキドキの大切な思い出の映画です。
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