horahuki

メイク・アップ/メイクアップ 狂気の3Pのhorahukiのレビュー・感想・評価

3.5
衝撃的ラストカット!!

『サマーキャンプ・インフェルノ』とまでは言わないけども、「何じゃそりゃ!」と声が出てしまうほどのアホみたいなラストカットが強烈な印象を残す3Pホームインベージョンスリラー。バーヴァの『血みどろの入江』と良い勝負なぶっ飛びエンドでした。

ちなみに私は未見ですが、キアヌリーブス主演『ノック・ノック』のオリジナルとのこと。見知らぬ美女2人がおっさんひとりの家にやってきて速攻3Pし始めるという急展開に笑いました。

ホームインベージョンスリラーにおいては如何にしてインベージョンされるかの過程がひとつの見どころになると思います。本作はそこが非常に巧みで、冒頭に示される「誰しも災難に巻き込まれる可能性がある」の言葉通り、多くの人の共感を得やすい起点を設けている。本作の起点は親切心。

主人公の家は森の中に建つ一軒家。妻は息子の手術のために数日家を空けている。雷雨の中、友達の家までの道を尋ねにびしょ濡れでやってきた見知らぬ若い女性2人。どうやら方向を完全に間違えたようで外は真っ暗、今夜は行く宛てもない。友だちに連絡するために電話を貸してくれませんか?という言葉で巧みに家の中に侵入する。非常に礼儀正しい2人の態度に安心しきった主人公は…。

助けを求める女性。無邪気さが漂う純真無垢な彼女たちの言葉の端々や行動の中に次第に違和感が混ざり始め、その些細な違和感が気づかぬうちに実感の伴う害意へと変わり家中の「色」を染め上げていく。ここは自分の家だ!自分は家主だ!というこの場では圧倒的であるはずだけども、自分以外に何の後ろ盾もない権力はいとも簡単に転覆し、そこに家があるという地に足のついた社会的安定が、敵に弱さを曝け出してしまうという規範に則っているからこその脆弱性。

自分の人生において積み上げてきたもの。それが真っ当であれば真っ当であるほど社会的地位の安定に繋がる。でもそれは規範の中で真っ当に生活している者にしか通用しない概念であり、規範の外にいる者に対しては最大の弱みになってしまう。

自分たちの特性を完全に理解し、戦略的に相手を油断させることで弱みを炙り出す。あとはその弱みにつけ込み支配関係を逆転させるだけ。狂ってはいるんだけど、物凄く賢い侵略者。

そんな彼女たちの背景についてはそれほど多くは語られないのですが、トイレを砂箱と呼ぶあたりから親や家庭環境における問題が匂わされる。詳しくはわからないけど、かなり闇深な様子…。2人の狂いようはその闇の深さの反動であるはずなので、よほどのことがあったのだろうと思います。

画質はVHSの方がマシレベルなのですが、内容は面白かったです。支配関係の逆転あたりの傾き方が特によかったです。中盤以降は若干ダレますけどね。あとネコを窓ガラスに投げつけるのも可哀想でした…。『ノック・ノック』も見てみようと思います!
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