マサキシンペイ

エスターのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

エスター(2009年製作の映画)
4.1
「見た目は子供、頭脳は大人!その名は少女エスター!」
狡猾かつ残忍な凶悪犯が、自身が幼い子供であることを盾にして周囲を飲み込んでいくサイコホラー。
人間の恐ろしい狂気を描くこのジャンルにおいて最高峰と言える完成度。不気味な瘴気が徐々に濃度を高め、それがじわじわと恐怖へと成長していく描写が非常に洗練されていると感じた。

なんといっても当時12歳のイザベル・ファーマンの怪演に背筋が凍る。子供らしい純真な演技は勿論のこと、企みや嘲りの含みのある笑い、目撃者を口封じとして脅す冷徹さ、憎悪を宿した鋭い睨み、発狂した時の絶叫、男を誘惑する淫靡な仕草と囁き、嫉妬に塗れた涙、殺意に満ちた鬼気迫る表情、これらすべてを信じられない水準で表現している。もはや子役としてではなく、広く女優として一級品の演技力だ。

観て損はない上質な一作だと思うが、ストーリーの胸糞悪さに対して、スカッとするようなカタルシスの展開がないので、映画に表面的な快楽を求める人にはおすすめできない。
マサキシンペイ

マサキシンペイ