2007年の104分の映画。映画『仮面ライダー THE FIRST』の続編であるが、ストーリーは独立しているので前作を見ていなくても視聴できる内容(仮面ライダーを初めてという人には不向き)。本作の見どころは、役者の良さがまずひとつ。仮面ライダー1号の黄川田(きかわだ)将也(近年ではヒーローものでは、騎士竜戦隊リュウソウジャーでマスターレッド 役)、相手役の石田未来(2008年に20歳で女優を引退)、仮面ライダーV3の加藤和樹とその妹でアイドル役の森絵梨佳は好演している。もっともよかったのが森絵の社長役の嶋田久作で、この人は登場するだけで怖い。本作がホラーとして評価できるのは、この嶋田の演技によるところが大きく、偽物の森絵を作ってしまうあたりが心理的な恐怖を作っている。
ホラーとしての他の設定はいただけない。細菌レベルに極小化されたナノロボットが本作では、空気中に散布され人を体内から変えていくという設定なのだが、まず「細菌」はマイクロのレベルで、「ナノ」といいたいならウイルスにしたかったところ。また、アイドルが歌う動画を見ると視聴者が怪死を遂げるという謎は解決されておらず、細菌でもウイルスでも、両者とも物質であるので電波では拡散しようがない。、ここは、コンピュータウイルスのような設定にしておけば、多少のリアリティが生まれて、視聴者側にも恐怖が伝わったかもしれない。本作の一番の問題は、外見で人を差別していること。顔にやけどを負った患者を看護師が顔をそむけるシーンがあるが、こうした行為は看護師にはあり得ない。かつて精神病の患者や身体障碍者をホラー映画の題材にしたものがあったが、本作のように外見の違いによって、その人を怪物のように扱う姿勢は許されるものではない。
本作の他の見どころは、3人の仮面ライダーのスマートなカッコよさ。マスクのサイズがTVシリーズのものより小さいのでシャープな印象をうけてよく、3人のライダーの違いも鮮明で、特に時々目の部分にライトが入るのが効果的。ベルトも小さめでスマートだが、「変身シーン」にまったく重きがおかれておらず、こうなるとせっかくのベルトも宝の持ち腐れ。ボディの部分は、普通の戦闘服とあまり変わりがなく、3人の違いも鮮明でなく、二号の腕の白いラインとV3の緑色のボディは、もう少し強調されるべき。バイクはV3の乗るバイクがオリジナルのハリケーンとは全く異なり、残念。
戦闘シーンの最大の見せ場は、映画の予告にある通りの1号と2号のダブルキックだが、1号はマスクを被っておらず人間の素顔なので興ざめ。本作の主人公の1号は、負けてばかりでサイクロンで逃げている印象。強さをみせるのが、高校生相手だけというのは残念。対する怪人のほうは、複数のショッカーライダーは特に活躍もせず、戦闘員とかわりがないので不要。ジャガーの怪人はV3の「ハサミジャガー」からとのことだが、壁越しにブレードで人の首を切断するシーンは迫力があったが、ライダーとの戦闘ではブレードは効果的に使われておらず、せっかくの伏線が役に立っていない。女怪人はV3の「ノコギリトカゲ」のリメイクとのことだが、マイナーすぎてV3のファンにも思い入れがある人はゼロなのではないか。カメバズーカとか、もっと魅力的な怪人がいただけに残念。この女怪人は、電動チェーンソーが武器というのは原始的で、ナノロボットで怪人を作ったとは思えない。
ショッカーの描かれ方がぞんざい。V3はショッカーの崇高な理想を信じている設定だが、どういった組織なのかも不明。ナノロボットを使った計画が、丁寧に説明されていないので、ライダー側が何を阻止しようとしているのかが不明。V3の改心は、妹一人のためのような描かれ方も弱い。ショッカー首領の声に、せっかくオリジナルの納谷悟朗をつかったのに、前半のみの登場。後半では、組織としての存在が希薄。
エンドロールの後に、パチンコ屋のシーンがあり、映画のストーリーとしては不要な付けたしではあったが、演じているのが、後に仮面ライダー鎧武/ガイム(2013年- 2014年) で 呉島貴虎 / 仮面ライダー斬月役を演じた久保田 悠来(ゆうき)であったためライダー映画としては意味のあるものとなった。