『The Crossing ザ・クロッシング Part II』(原題:太平輪 彼岸 / The Crossing 2)、の主役はチャン・ツィイーと金城武。1949年に発生し1000人が死亡した太平輪沈没事故がPart IIのクライマックスになるが、本事故は海難事故の歴史上トップ10に入っている。海難シーンは、やや長いが、緊張感は高く、極限状況における人の振る舞いがよく描かれており、主人公たちのヒロイックな活躍に祈るような思いで視聴した。
本作は、冒頭にPart Iと重複するシーンが複数登場するが、Part Iを見終わってはじめて理解できる歴史・人物関係もあるので、重複部分は気にならず、かえってPart Iのそれぞれの場面の意味の理解に役に立つようにできている。長澤まさみが金城の相手役として回想シーンの形で登場するが、黒木瞳は長澤の母役で出演。大戦後に、台湾在住の日本人は日本に引き揚げることになるが、終戦前後の日本の台湾における立ち位置、日本人と台湾人の関係の縮図として長澤の出演シーンは歴史の理解の助けになる。
本作では台湾の金城の家族が国民党の白色テロの犠牲になるストーリーがあり、これにまつわるシーンは恐ろしい。この時代を描いた他の映画作品には台湾のホウ・シャオシェン監督の『悲情城市』『好男好女』がある。しかし、この二作品はDVDが絶版で配信もないため、現在、安価の配信サービスで視聴できる本作は、台湾の近現代史を描いた作品としても貴重。