いの

ミスティック・リバーのいののレビュー・感想・評価

ミスティック・リバー(2003年製作の映画)
4.3
ショーン・ペン、ティム・ロビンス、ケヴィン・ベーコンの3人が出演、しかも監督はイーストウッド。ということだけでも期待高まる(ここにローレンス・フィッシュバーンが絡むと、ちょっちウザいw)。


子ども時代に不意に訪れた不幸。それが、いつまでたっても尾を引く。不幸を呼び寄せてしまうかのように。3人のなかで、特にティム・ロビンスの演技が群を抜いている。目の奥が空洞。彼の目の奥底をのぞきこんだら、果てしない闇に呑み込まれてしまう。底なしの川へと引きずり込まれてしまいそうな雰囲気を、からだ全体でも表現している。観ていて終始ザワザワする。


映画の冒頭で、ひとりの少年を男2人が車に乗せて走り去ったことから不運が訪れるのだけれど、同じ場所で、もうとっくに大人になっているティム・ロビンスを男2人が同じように車に乗せて走り去る場面がある。嗚呼、また不吉なことがおこるのではないかと。繰り返しが、寄せては返す波のように、あるいは底なしの川に投げ込まれた小石のように、不安を広げていく。子ども時代の冒頭のシーンと、ラストのシーンが重なっている演出にも唸る。因縁は因縁を生む。なんともやりきれない映画。



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*『荒木飛呂彦の超偏愛!映画の掟』という本を最近読みました。ジョジョも知らないのに、読んでごめんなさいっ。これは、ミステリー映画の面白さについて語られている本なのですが、荒木飛呂彦氏が選ぶサスペンス映画の第4位に、今作が堂々ランクインされていました。それで観てみることに。


*わたしは、トゥー子が出てると、すぐわかるようになっちゃった。風貌がかわっていたとしても、声と話し方でわかるんです!えっへん。イーストウッド監督作に出演していらっしゃったのだと思うと、感激が渦をまいてトルネードしちゃう。


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追記

*少し前に読んだ『黒沢清、21世紀の映画を観る』にも、この映画が紹介されていました。以下、メモを兼ねて抜粋

「これこそが21世紀の河と暴力の映画、たぶん象徴的な代表作だろうと思います。」

「しかもこの映画の題名には堂々と「リバー」とつけられていながら、ここのシーンだけではなく、映画全体で河そのものはほとんど映ってきません。川縁で物語が進行し、河が話題になるのですが、今ご覧になったように、どうやらすぐそばに河があるらしい、ということしか示されないのです。つまりここでは河そのものが「外部」であり、主人公たちがうかつに立ち入ることを禁じられている場所であり、まさにそれは映画の外側にある「暴力に満ちた世界」そのもののように扱われているのです。」
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