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終着駅のRのレビュー・感想・評価

終着駅(1953年製作の映画)
4.0
古い映画探求、今回はビットリオデシーカ監督のこの作品。男と女の哀愁恋愛メロドラマかーーー興味わかねーーーということでコレを選びました。見始めてまず思うのが、主人公メアリーを演じるジェニファージョーンズのベタついたあざとい表情のしつこさ! ゔっ……きつい……耐えれるかな……メアリーはローマにある大きな駅に到着。さまざまな人でごった返す構内に、ものすごいイケメンが現れる。それがモンゴメリークリフト演じるジョバンニです。メアリー(既婚)は妹に会いにローマに来、滞在してる間に、ものすごいイケメンのジョバンニと不倫関係になってしまった。ジョバンニは整いすぎたイケメンをメアリーに近づけ、引き止めようと迫っていく。男は女を失わんとしているとき、そのことが分かるんだ。愛する女を失うのは死ぬのと同じだ、と、ほざきながら。でも、私には幼い子どもがいる、主人には私しかいない……あなたはまだ若い、と。(ちなみにメアリーはそこそこのおばさん。) そのようなやりとりをしているときに、メアリーの甥が、叔母の荷物を持ってやって来る。甥といっしょにいることで、ジョバンニを避けようとするメアリー。そしたら怒り心頭のジョバンニがいきなり平手打ちをバシーーーーー ン!!! うわっと思うボク、むほーーー!!!と取り乱すメアリー。立ち去っていくジョバンニ。刻一刻と電車の出発時間が近づいてくる。本作は、上映時間と映画内の時間がほぼ同じくらいの長さになっていて、この数十分の間に、メアリーは家族のもとに帰るのか、ジョバンニのもとに残ることになるのか。ジョバンニはそのイケメンとパッションでメアリーを口説き落とすことができるのか。というある意味タイムリミットサスペンスを展開しながら、同時に駅構内で行き交う人たちの様子がちょいちょい描かれていく。さすがローマな神父さんぽい人たちのグループが出てきたり、戦後の急速な復興に乗れなかった貧困な家族が出てきてちっさい子どもたちがめちゃくちゃ可愛くてほっこりやけど胸が痛んだり、一番気になるのが、公衆電話のところにいた怪しいおっさん。その後も何人かの若い女をじーっと見つめてはコソコソついて行ったり、このキモいオヤジはいったい何やねん⁉︎ と謎があったり。よくよく考えると、神父さんはメアリーの罪の意識のために強調されてたのかな?とか、子どもたちや妊婦は自分の過去や子どもへの意識を象徴してるのかな、とか、何となく想像湧くねんけど、変態オヤジは一体……ジョバンニののぼせ上がりはそいつの変態と変わらないという意味だったりするのでしょうか。もっと合理的な解釈のある方、おられたら教えてください。で、終盤になってはじめてジョバンニの職業が分かるのも個人的にはけっこう面白かったし、最後の数分ではいよいよ音楽もサスペンス色が強くなって、音楽につられて心臓がドキドキ。最初からエンディングはこうなるんだろうなって予想がつきつつも、演出にのせられるエモーション。面白いですねー。ただ、本作全体にねっちょり漂う何となく気持ち悪い感じは、おそらく大部分が、ジェニファージョーンズのいちいち情けないネチネチした演技のためなのではないでしょうか。そして、一部は、モンゴメリークリフトからそこはかとなく感じられる、オレの顔面をしかとご覧ください、と言わんばかりのナルシシズムのためではないでしょうか。とはいえ、モンゴメリークリフトのイケメンさって深みがなくて、ちょっとトムクルーズみたいな雰囲気がありますね。というわけで、なかなか面白いような、どうでもいいような、不思議な後味を残す映画でした。本作に似た系統の別の映画逢びきの方が確実にベターなクオリティーですが、本作にも捨てがたい半笑いの変な魅力があります。
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