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マッドマックス2のMOCOのレビュー・感想・評価

マッドマックス2(1981年製作の映画)
4.5
「私たちは『太陽の楽園』を目指して行った。
 新しいリーダーには空から来た男がなった。 
 あとはパッパガーロの計画通りに進んだ。貴重な燃料はバスに隠してあった。
 私は大人になり次のリーダーに選ばれて北部族の長になった」


 前作『マッドマックス』から3年後のさらに荒廃した世界で、砦を築き原油を掘り出しガソリンを精製する大人しい人々が、砦を取り囲む暴走族から逃げ出す時に現れた自分達とはまったく異なる強い男「マックス」に救われ生き延びた・・・その時まだ少年だった男の回想の物語です。

「近頃は目も霞むようになったが、記憶だけは薄れない・・・」と語り始める回想の主はマックスと出会ったときはフェラル・キッドと名付けられていた孤児で、教育を受ける機会がなかったのか言葉は理解できるのだが、言葉を発することが出来ず奇声をあげるだけの子供だったのですが、マックスと出会った時からマックスに強い思慕を抱き、暴走族との戦いで驚異的なドライブテクニックで大型タンクローリーを操るマックスの助手席でマックスの手助けをする唯一の男です。


 燃料の供給がなくなり車を維持するためにガソリンの奪い合いが始まる中、マックスも暴走族に追われ熾烈な逃走の後に横転した暴走族の車から希少なガソリンを手にいれます。

 マックスはオートジャイロのパイロットのジャイロ・キャプテンの情報で原油を採掘してタンクローリーにガソリンを溜め込んでいる者達がいることを知ります。彼らの砦は火炎放射気などで守りを固めているのですが砦の外はヒューマンガスが統率する暴走族が取り巻き「命の保証と引き換えに砦(ガソリン)を受け渡せ」と要求しているのです。

 砦から数台の車が飛び出し暴走族に拉致されたのを見たマックスはその内の一台のドライバーを救いだし、砦に連れて帰る引き換えにガソリンを得る約束を取り付け砦に向かいます。
 砦に入ったものの救出した男は既に息がなくマックスは暴走族の仲間を疑われ拘束されてしまいます。

 タンクローリーに溜め込んだガソリンは砦のリーダー・パッパガーロが目指す3,200㎞離れた「緑の楽園」で仲間と安心できる生活を送るための大切なパスポートなのですが、タンクローリーを牽引するトラックが砦にはないのです。砦から飛び出した数台の車はトラックを探しに出ていたのです。
 マックスは暴走族に追われていたときに思い当たるトラックがあり、乗ってきたインターセプターをガソリン満タンで返還してもらうことを条件にトラックを運ぶ契約を交わします。
 ジャイロ・キャプテンの助けを受けながら追いすがる暴走族の攻撃をかわし、トラックを砦に運び入れたマックスは砦の者達に一緒に『太陽の楽園』に行くことを勧められるのですが、一人砦を出ていきます。
 砦を出とたんにマックスは暴走族の攻撃にあい、インターセプターは大破しガソリンを奪いに来た暴走族が知らずに触れたガソリンタンクの起爆装置で跡形もなく吹き飛んでしまいます。

 インターセプターの爆発時、重症を受けながらも岩影に身を潜めたマックスはジャイロ・キャプテンに救いだされオートジャイロで砦に帰ってきます。
 マックスは自らトラックの運転を引き受けガソリンを満タンに積み込んだ重いタンクローリーを牽引し、暴走族の執拗な攻撃をかわしガソリンを奪われずに合流地点を目指します。
 パッパガーロの計画は暴走族が砦を出たタンクローリーを追いかけるその隙をついて砦の者達は車で脱出し、320㎞北のパウダー・リバーの橋で落ち合うというものです。

 改造されたタンクローリーを守るために武装して乗り込んだ仲間は暴走族の攻撃で次々と命を落とし、タンクローリーにはマックスとフェラル・キッドだけに・・・。

 パッパガーロは作戦の成功を報せ、タンクローリーの乗員を救出するためにバギーで現れるのですが暴走族の攻撃で倒れてしまいます。

 タンクローリーを止めることが出来ないヒューマンガスは自らの命と引き換えに車を正面からぶつけタンクローリーは横転し運転席から這い出たマックスはタンクローリーから流れ落ちる砂を見つめながら・・・。


 ジョージ・ミラー監督は現在進行形のかたちではなく既にマックスは死んでいるかもしれない過去の人として描き、主人公であるはずのマックスが砦のリーダーにまんまと騙されてタンクローリーを死に物狂いで運転するという驚きのストーリーです。

 タンクローリーの積み荷がガソリンではない事を知らなかったのはマックスだけだったのか?ほとんど笑顔を見せないマックスが後からオートジャイロで駆けつけたジャイロ・キャプテンと目を合わせて「やられたぜ」というように見せる微笑みが印象的です。

 
 昔、友だちにこの映画はどんな出だしかを尋ねたら「老人になったあの子が思い出話としてマックスのことを話し・・・」と答えたのは一人だけでした。この映画のCGを使っていない凄いカーチェイスが冒頭のフェラル・キッドが語るシーンを忘れさせてしまうのかもしれないですね。
『マッドマックス怒りのデス・ロード』同様主人公はマックスと思わせる演出で私たちはジョージ・ミラーにまんまと騙されているのかも・・・


 20リットルの灯油缶を満タンにして手運びした経験がある人ならあれを4缶肩に担ぐことは絶対に無理と解りますよね、それにガソリンが入ったガソリンタンクは歩調にあわせてゆらゆら動くことなんてあり得ないですね・・・そこはとても残念なのですがシリーズ4作品の中で一番好きな作品です。

 カーチェイスが最も迫力のある映画はこんな言葉で終わります。
「マックスはどうなったかは知らない。彼は記憶の中だけに生きている・・・」
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