horahuki

ショック集団のhorahukiのレビュー・感想・評価

ショック集団(1963年製作の映画)
3.8
郷に入って郷に従っちゃった…。

初サミュエルフラーです。
精神病を装い入院した精神病院で、次第に精神に異常を来していく男ジョニーバレットを描いたサイコスリラー。

理性がどんどん崩壊していくのは怖いですね…。精神病院内で発生した殺人事件の犯人を突き止めピューリッツァー賞を獲得するために、目撃者とされる患者3人に取材をしたい主人公は精神病を装うわけです。

自分は「正常」であり、こいつらとは違う。そんな根拠のない自信と自分の「理性」に対する絶対的な信頼。でも「正常」なんて結局は周りとの比較によって生み出される概念だし、「理性」はその属する共同体における常識というものに左右されるもの。だからこそ自身の周囲に合わせて「理性」も「正常」も変化していく。

そして主人公が聞き取りをする患者3人が象徴するのはアメリカ…というより人類の黒い歴史。戦争、KKK、核兵器。それらが原因で精神を病んだのであろう3人は、そういったことが「正常」だとされた時代の被害者であり、そういったこと(争い)が「正常」だという考えが支配した時代とは反対の「正常」を持っていた者たちなのかなって思いました。

「神は滅亡を願う時人を狂わせる」というエウリピデスの引用が冒頭とラストでされますが、じゃあ狂っていたのは誰なのか。本当に狂っていたのは彼らなのか、それとも彼らを狂ってると考えて精神病院に入院させた外の人々なのか。そんな感じの映画なんだろうな〜って思いました。

というか本作は完全にホラー映画だと思うんだけど、一般的にはホラー映画だとはされてないようですね。
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