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座頭市のMOCOのレビュー・感想・評価

座頭市(1989年製作の映画)
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「鏡・・・はじめて(見る)。
似てる おかあさん・・・」 

「その鏡あげるよ
おっかさんに会えてよかったね」

 勝新太郎氏主演の最後の「座頭市」はTV放映時に勝新太郎氏が直接再編集した、117分の最近流行りの「ディレクターズカットバージョン」が存在します。
 私はこの放送を楽しみにしていたのですが、放送が始まってしばらくして友人に呼び出され、再放送を期待しなから出掛けたのですが、放送はこの一回だけ、二度と放送されませんでした。最悪を想定して最初からビデオ録画すれば・・・と、後悔したものです。
 
 その放送のことも、後悔したこともまったく忘れていたのですが、なんと日本映画専門チャンネルがこの勝新太郎ディレクターズカットバージョンを放映することを知り思わず録画予約をしたのですが、こういった細かい拘りを持っている人がいるんですよね日本映画専門チャンネルには・・・。もう感謝しかありません。
 とは言っても、もともとの映画にさほど名作感を感じていないため、どこがどう違うのか比較鑑賞する気が湧いてこないのが残念です。

 映画の中で目を引くのはこの映画でデビューを飾った奥村雄大氏、祖父に杵屋勝東治・二代目中村鴈治郎を持ち、父は勝新太郎、母は中村玉緒という奥村雄大氏は歌舞伎俳優を彷彿させる存在感です。

 奥村雄大氏は2019年急性心不全のため55歳で亡くなられ、発見されるまで数日あったという淋しく悲しいニュースは衝撃的に伝わったのですが、この映画のリハーサル中に奥村雄大氏が使っていた日本刀が共演者の首に刺さり死亡する事故も衝撃的に伝わりました。事故とはいえ25歳の時に人命を奪ってしまった事実を彼はどう受け止めていたのでしょうか・・・。

 後の裁判では真剣と知らされずに渡された刀ということで奥村雄大氏は無罪となりましたがこの事件で映画はお蔵入りになるのではないかと、公開が危ぶまれることになりました。

 勝新太郎氏最後の「座頭市」は、残念ながら過去作品の集大成でもなければ特筆することもない映画になってしまいました「殺陣と吹き出る血」というテクニックを見せるための、ストーリーは二の次の映画を作ってしまったのです。
 脇を固める役者も駄目なのです、陣内孝則、内田裕也、片岡鶴太郎、ジョー山中は時代劇にはミスキャストなのです、重厚さがないのです。
 さらにあり得ないことにBGMに英語の歌詞の歌を使ってしまっているのです。
『天才たけしの元気が出るテレビ』ではビートたけしとメインキャストだった松方弘樹 氏をはじめ、時代劇を支えてきた多くの役者がビートたけしの「座頭市」に挿入されるタップダンスと金髪を「時代劇にはあり得ない」と批判し、ビートたけしとの交流を失くしていったのですが、時代劇を支えてきた勝新太郎氏が「時代劇にはあり得ない」過ちを犯しているのです。

 という訳で☆はつけられません。
 宿場町へ向かう街道の勇壮な自然の中でも圧倒的存在感の座頭市が少しもいない、淋しい作品なのです。
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