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ペット・セメタリーのMOCOのレビュー・感想・評価

ペット・セメタリー(1989年製作の映画)
2.5
「今夜のことは内緒だ」
「あれはなんだったのだ?」
「ルイス、あれは秘密だったのさ、どんな女にも男の本当の心なんか分からない。
 男の心は岩のように硬い、あのミクマク族の埋葬地のように」


 W.W.ジェイスコブの「猿の手」という短編小説をご存知ですか?

 1902年に発表されたこのお話はスティーブン・キングがリスペクトする作品です。

 息子と3人で暮らす老夫婦の家の夕食に招待された知人が3つの願いを叶えてくれる「猿の手」のミイラを置いて行きます。
 元々話を信じていない3人は息子が冗談で「200ポンドお願いすると、借金が返せるよ」と話したことから猿の手に200ポンドをお願いするのですが、何も起こらないうちに朝が来て息子は仕事に出掛けます。
 その日息子の会社の使いの者が訪ねて来て「息子さんが会社の機械に挟まれ亡くなられた。会社に事故の責任は全くないのですが、会社が功労金として200ポンドを用意しています。」と伝えられ老夫婦は驚きます。
 あわただしく葬儀を終え埋葬を済ませた夜、妻に「猿の手に、もう2つ願いができるはずだ」と、息子が生き返るようにお願いするよう言われ、夫は躊躇しながらもお願いをします。
 その深夜、老夫婦は玄関のドアをノックする音に気がつきます。最初は小さなノック音がどんどん激しくなっていき、夫がためらっていると妻は鍵を開けようとし始め、夫は慌てて「猿の手」を探しだし3つ目のお願いをします。
「息子を墓に戻してくれ」
 それまで激しく叩きつけられていたドアを開けると同時に何事もなかったような静寂が訪れ・・・。

 オムニバスの短編集ぐらいでしか読めない作品ですが流石に面白く翻訳されています。

 このW.W.ジェイスコブの「猿の手」をモチーフに1983年に発表された小説「ペットセマタリー」は父親になったキングが「愛する者を失うことへの恐怖」について著した作品です。脱稿したものの私的な体験から書かれていることを理由に発表を躊躇い、3年の間発表されなかった作品です。

 1989年の映画はスティーブン・キング自ら脚本を書いたこともあり、それまでのキング原作映画最大のヒットになったのですが、残念なことにキャストと脚本に問題があった気がします。

 主人公である父親を演じたデイル・ミッドキフは1993~94年にかけてミア・サラ(タイムコップでバンタムの奥さん役)をヒロインに迎えてのTVドラマ「タイムトラックス」という時空警察の主人公を演じた2枚目なのですが演技が下手で「演じている」感が強くでてしまい鑑賞中気になって仕方ありません。今一つ人気俳優になれなかった理由がここにあるのかもしれません。
 2020年の「ペットセメタリー」では姉弟の姉が死の国から蘇ってくる脚本に変わったのですが、キング脚本の1989年の「ペットセメタリー」は原作の通り弟が蘇ってくる設定のため、小さな男の子の演技が幼く人形劇のような展開になってしまっています。

 2作品を比較して観る時間のない人には2020年の「ペットセメタリー」をお勧めしますが、この映画も面白い映画です。
 それにしてもラストシーン、あの奥さんにキッスは考えられません。普通、過ちに気付くでしょ。
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