シズヲ

アイアン・ホースのシズヲのレビュー・感想・評価

アイアン・ホース(1924年製作の映画)
3.8
サイレント映画を劇伴付き版で鑑賞。アメリカにおける大陸横断鉄道の建設を描いた叙事詩的西部劇。当時の大作『幌馬車』に対抗して撮ったということもあってか多数のエキストラや大掛かりなセットを惜しみ無く導入しており、娯楽性のある史劇大作というべき雰囲気を強く押し出している。圧倒的な物量が疾走感溢れるアクションにおいても工夫達のドラマにおいても効果的に絵面を作り出す。それだけに作中で展開される「西部開拓時代」の息づかいも実に生々しく、DVDの冒頭では淀川長治さんが当時の労働者と話したエピソードを語っているだけに余計現実味を感じる。

「鉄道技師の息子と土木業者の娘のラブロマンス」「父を殺した偽インディアンとの因縁」という登場人物のドラマが主軸である大陸横断鉄道建設のドラマに結び付き、物語の進行と共に収束している点がやはり秀逸。このおかげで史劇性と娯楽性がしっかり共存している。コメディリリーフ的な三銃士を始めとするユーモアの数々もまた軽妙で楽しい。それと作中のインディアンは基本的に悪役だけど、インディアンの死体に飼い犬が寄り添う描写をさりげなく挟んでくるのが憎めない。

リンカーン大統領への賛美を始めとして良くも悪くも「愛国神話」的な傾向は否めないし、それだけに後の『三悪人』のコンパクトさに比べると少々長尺に感じる部分はある。今となっては西部開拓史の美化でもあるけど、ジョン・フォードの演出力で描かれた作中の空気感にはやはり確かな魅力がある。離別していた幼馴染み、南北の兵士、東西の鉄道によって描写される「分かたれていたもの同士が繋がる」ラストにもグッと来る。
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