horahuki

P2のhorahukiのレビュー・感想・評価

P2(2007年製作の映画)
3.7
僕を失業させる気か!?

アジャ製作&脚本の密室スリラー。ジャケからもタイトルからも全くそんな素ぶりは見せてないけど、地味にクリスマス映画してて、クリスマスに見ればきっと楽しい気持ちになれること間違いなし(違った意味で)な面白い作品でした!

楽しいパーティが待ってるクリスマスイブの夜に自分の落ち度じゃない他所の尻拭い的な残業で遅くまで会社に残らされるってだけで悲しい気持ちになってくるし、帰るのを妨げるかのように次々に起こるイレギュラーを背後や死角、物陰からのアングルによるカメラを多用することで、偶然として片づけられるような事柄に何者かの思惑が絡んでることを匂わせ、そこから感じる気持ち悪い感覚が装飾のされた警備員室へと辿り着かせるってのが良い感じ。

選択肢を提示することで主導権を握らせてると思わせつつも、実際には選択肢なんてものはなく、既に絡め取られちゃってるってのが怖いし、日常的に頻繁に接しているにもかかわらず名もなき空気のような存在でしかなかったものが、急に実体を持ち生死を握る存在にまでなり得てしまうっていう日常に潜む潜在的恐怖が、誰もが置き換えやすいものだからこそな嫌〜な気持ちにさせられる。

言動はまともなのに状況が異常っていうアンバランスさが、彼の外面と内面そのものだし、ケバケバしいクリスマスの装飾は外面でもあり内面でもあるわけで、そういう外と中の相違は冒頭の「ゴージャスな服装だけど田舎出身」っていう主人公と従業員の会話から提示されてるのも丁寧だし、表に出てくる氷山の一角的なところしか感じ取れない人格の底に果てしなく広がる闇の身近さを訴えかけてくるのも好き。

アジャらしいグロをそれほど物語的に関係ないところでぶち込んでくるのはサービス精神感じられて良かったし、『T2』でキッズだった私にトラウマ植え付けたシーンを連想させる残虐さが最高でした!

中盤以降は好きなもの詰め込みました的な細切れパーツのバーゲンセールみたいな感じなんだけど、ひとつひとつがツボ押さえてるから楽しかったし、まさか『激突!』になっちゃうなんて思わなかったから笑ったし、結局はクリスマスが全部悪いってのもクリスマスホラーらしくて良いオチでした。実際は違うけど(笑)
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