むぅ

ちいさな哲学者たちのむぅのレビュー・感想・評価

ちいさな哲学者たち(2010年製作の映画)
3.7
「かさぶたと鼻くそどっちが美味しいか知ってる?」

「なんで空が青いか知ってる?」
「なんで壁がまっすぐか知ってる?」
何故いちいち"◯◯なの?"ではなく"知ってる?"かと、こちらが知らないベースで聞いてくるのか、ひっかからない事もないが、産まれてからこのかたママと仲良しの私を宿敵認定している友人の息子の総攻撃が止まらない。
哲学ならもうちょっと頑張れそうな気もするのだが、物理になってくると私はお手上げである。
そんな中、珍しく即回答出来る質問がきた。

「鼻くそ!」
「あたり!」
「食べたの?」
「しょっぱかった」

「(美味しかった?)」
宿敵解除してもらうチャンス!と掘り下げようとしていたら、郵便局の窓口で用を済ませたママがこちらを凄い形相で見ながら近づいてきた。ごめんなさい。

「鼻くそもかさぶたも食べものじゃないよ」

宿敵じゃなくなる日は遠い。

「今日って200円持ってる?」
「うん(...大人だからね)」
「ガチャ行こうぜ」

おまけにカツアゲまでされる。

「むぅとママ喋っちゃダメ!」
彼を放ったらかして世間話をしているとキレ散らかされるが、どちらかが真剣な話をしている時は
「YouTube見たい」
と言ってくる彼に気付いた時の、驚きと感動は忘れない。
子どもって、こちらが思っている以上に大人を見ている。


フランスの幼稚園。
"哲学"の授業のドキュメンタリー。

「頭の中は見えないよね」

そこから始まる子どもたちの言葉がどれも、なるほど!と思わせる。
授業が進むにつれ、テーマは 恋、愛、死、自由、貧富の差など多岐にわたる。

「"死んだ"と"亡くなった"は違うの。お棺に入ったら"亡くなった"なの。"死んだ"は違う」
もどかしそうに話す彼女の言わんとする事が、分かる気がする。
"さよなら"を言う準備が整ってしまったことを"亡くなった"と言いたいのかな...と思った。

また、哲学の授業で扱ったテーマについて、子ども達が家族と話したかどうかが回を重ねるごとに現れてくるのが興味深い。
考えることの大切さ。
そして、考えたことを伝えることの大切さ。

「むぅ自転車乗れる?」
「乗れるよ」
「!!!」
「(乗れないって思ってやがったな)」
何故乗れないと思ったのか聞いてみたいところだが、鬼ごっこを面倒くさがる私の運動神経の度合いを彼はとっくに気付いているのだろう。

今度会う時にママの目を盗んで聞いてみよう。

「どうして鼻くそ食べようと思ったの?」

バーで時折出会う、こちらを"年下だから"前提でお話する方にとてもお行儀が悪いけれど、心の中で鼻を鳴らす事がある。
でも、私も彼に同じことをしていたなと気付いた。改めなければ。
目指せ、脱 宿敵。
むぅ

むぅ