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暗黒街の弾痕のRのレビュー・感想・評価

暗黒街の弾痕(1937年製作の映画)
4.1
タイトルと監督名だけで借りたので、ギャング映画か何かだと思って見てみたら、ぜーんぜん違った。犯罪ものではあるんやけど、純愛逃避行モノ。イノセントなボニー&クライドって感じの、ジョン&エディー。とは言え、エディーはいくつかの犯罪で3回目の投獄を食らっていて、そっから心を入れ替えて、堅気の仕事を続けていこうと決心している。が、前科のある者に対する世間の風は厳しく、ささいな?ミスで仕事をクビになってしまう。それでも愛を貫いてくれる、そこそこいいとこのお嬢さまジョン。ところがどっこい、クビとタイミングを合わせるかのように銀行強盗が起き、エディは容疑をかけられ、再び御用、さらに最悪なことに冤罪で死刑宣告されてまう。絶望したエディーはジョンの助けを借りて脱獄を試みようとするのだが、とんでもないことが起こってしまう…! 苦々しい口惜しさと、行方の不確かな恋の哀しみが色濃く全体を覆う映画で、見ててなかなかつらい。前科者に復帰のチャンスを与えないという問題は、日本にもきっとたくさんあるんじゃないだろうか。そのあまりにも排除的なスタンスに表れる醜さと、逆に、逃亡するふたりの純粋さ、健気さ。ただ、ちょいアホ…。この描き方にまさに監督の思想が反映されてるんだろうと思う。犯罪者を隅々まで悪人であるとしか見られない心の偏狭さとは常に大きな問題だろうし、それがもとになって起こる悲劇も相当あるに違いない。とかいろいろ語りたいことはあるが、映画としては、他のラング作品に比べると、前半ちょっと物足りない感じがしなくもない。が、ストーリーが進むにつれてだんだん緊張感を増してきて、神父さんエピソードのあたりから最後まで完全なる没頭。最後の、I'd do it again darling, all over again, glad. には泪が…。愛とは何と美しく、はかなく、悲しいものか。愛なんかのために命を捨ててはならぬ。もっと命をかけるべきものが他にあるってのによぉ(TT)。人は、どんな人であっても、人間に対する希望を失ってはいけないね。失ってしまったところに、あらゆる悲劇が競い起こる。それを痛いほど感じた。
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