140字プロレス鶴見辰吾ジラ

パプリカの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

パプリカ(2006年製作の映画)
4.0
【核心】

夢の世界=大虚構

これを遺憾なくアニメーション的快楽に乗せてぶちまけた物凄い作品。今敏ワールドが夢の世界の濃厚な恐怖感と不可思議アタマを奏でている。「パーフェクトブルー」に先んじて本作を鑑賞したが、「パーフェクトブルー」でのヒロインの自己を鏡などの反射した自己として他者評価の存在性を定義したときから、さらに大虚構的エンターテイメントに進化させながら、夢=核心としてその者の真実の姿を映している。パプリカという虚構世界にダイブできる存在が本作の裏主人公である刑事のトラウマの治療と成長をそのまんま映画として映してくカタルシスは堪らない。

夢世界=大虚構は、スピルバーグの「レディプレーヤーワン」にチーズダッカルビをぶっかけたようなカオスであり、現実を生きる人のペルソナの内側が、今敏らしさあるシームレスな場面つなぎの映画酔いでトラウマや快楽を同時接種するような危険な体験を味わせてくれる。まさにスパイスとしてのパプリカである。

「パーフェクトブルー」の反射でしか映せない自分から、「パプリカ」にて垣間見ることのできない人の深層心理にダイブして事件が解決していく様は、何か鑑賞者のセラピー的になるのは、ピクサーの「インサイドヘッド」的でもある。

世界感がトラウマじみているため、スパイスがキツいようだが、本作のドライブ性は中々味わえない。クリストファーノーランが「インセプション」でトレース上等でオマージュしてみせたほど、作品としてクリエーターへの劇薬性も忘れてはいけない。

今が現実なのか?虚構なのか?カオスとなった画面で、虚構サイドのパプリカの危機を現実に閉じこもった刑事が映画のスクリーンを突き破って救うという清々しい格好良さや、巨大化した自我を過去の愛した日々にて救済したり、本作のヴィランを飲み込んだり…

今敏の遺作として表現は悪いが出来過ぎている。もっとあの世界観を見たかったと多くの映画ファンに永遠に刻ませるに足りる熱量を孕んだ虚構の祭りだった。