あなぐらむ

斬るのあなぐらむのレビュー・感想・評価

斬る(1962年製作の映画)
4.8
僅か70分の中で、数奇な生い立ちと侍として生きる事の無常を描き出す、三隅剣劇の鮮やかさが堪能できる。
縦横に動き休む事の無いカメラ、流れるような雷蔵の殺陣と幽玄とも言える眼差しの三弦の構え。
美しい武家言葉と女たちの壮烈な生きざま。脚本は名手・新藤兼人。

苛烈な運命の雷蔵の実母に藤村志保、さすらいの旅で出会う運命の女に万里昌代。どちらも美しい。天知茂も脇で光る。
三隅らしいばっさり一刀両断もあります。
うつろう季節の映像、すすき野原。大映の重厚なセットにはため息が出る。こういう時代劇が観たいのだ。
ラスト、高倉信吾は自分を拾ってくれた家の為に切腹して果てるんだけど、それで死んでいった母、妹たちに会えると寧ろ嬉しそうなんだよね。それがハッピーエンドなのかっていうのがね。切ないのよ。