なべ

母なる証明のなべのレビュー・感想・評価

母なる証明(2009年製作の映画)
4.0
どよーーーん。

 観たことがそうではないとひっくり返され、思ってることが反転する撹乱映画。
ゴースト・ストーリーズがつまらなくて、ポン・ジュノ作品で味変しようとしたけど間違えた。味が強すぎる!てかこの映画嫌いだったの忘れてたよー。

 他のポンジュノ印のような胸糞じゃなくて、本作はとびきり鬱なんだよな。もうやるせなくて、救いがなくて、気持ちの持って行き場がないやつ。
 それでもオープニングの母ちゃんが野原で踊るシーンは、あれ、こんなにステキなシーンだっけか?と思わず居住いを正したわ。初見時はまったく意味がわからなかったけど、今回はどういう経緯かわかってるから、ああ、そこで踊っちゃうんだっていうのもあったのかも。ほんと韓国人俳優はいい顔してんなと思った。
 今回はこの母ちゃんに倍賞美津子の顔がダブって見えて、国内でリメイクするなら倍賞美津子と那須雄登あたりか、なんていらぬ妄想をしてたのは、のめり込んで見ると痛い目を見るというのを身体が覚えていたせいかもしれない。
 知的障害者と犯罪って今の日本ではなかなかつくりづらい題材だけど、韓国ではまだ大丈夫なんだな。日本だと知的障害が犯罪と結びつきやすいという誤解を与えかねない!って大きな差別問題になるところだ。怪奇大作戦の狂気人間なんて欠番になって、いまだに放送禁止だもんね。

容赦ないよ、ポン・ジュノ。

 家族の地獄味という意味では、西のアリ・アスター、東のポン・ジュノってくらいの地獄。また演出がリアル過ぎるのもキツいわ。
 立小便してる息子のチンコを見ながら丼で漢方を飲ませる母子の絵とかやめて!排出と吸引の同時実行with母親とかほんとやめて!生理的にゾワゾワする。
 セックスシーンもポンジュノの手にかかるとなんか居心地悪くて。やり方が映画用じゃなくてリアル過ぎるのな。
 だいたい出てくる奴らがどいつもこいつもクセが強くて、ポン・ジュノの韓国の田舎者ってこういう奴らよって目線もなかなか辛辣。

 パラサイトではにおいがキーポイントになってたけど、母なる証明ではツボが鍵となってた。悪い記憶を消すツボが。
 ラストでバスの中でスカートをまくり上げて腿に鍼を打つシーンがもう辛くてつらくて。息子が知的障害者ではないと知った母の狼狽、その息子のために犯した罪の恐怖。息子の恐ろしい真実を知った自らの記憶を消し去りたいと思う母親の後悔。
 こんなテーマの映画をつくるって、ほんとポン・ジュノは罪深いと思う。
 大嫌いな映画だけど優れた名作だ。この名作感がクセモノで、嫌いだったことをつい忘れちゃうんだよなあ。そしてまた観てしまう。
 パラサイトよりこの作品の方が見終わったあとの不快感はずっと長く残るから注意して。
なべ

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