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雨の午後の降霊祭のsleepyのレビュー・感想・評価

雨の午後の降霊祭(1964年製作の映画)
4.2
弱き人は優しい人 *****


雨のロンドン郊外、小雨のそぼふる中、昼間から窓をしめきって一軒の家で降霊会が行われる。このセッションの主催者は霊媒師マイラ(スタンレー)。夫はビリー(アッテンボロー)。いきなりのゴシック、あるいはオカルトスリラー的滑り出し。蝋燭に浮かぶ皆の真っ白な手。本作はすぐに一転、ある犯罪を巡るサスペンスとなり、異常な神経戦の様相を呈し、観客を夫婦の特異な関係の中に引きずり込む。無職で気弱でいいなりな夫、エキセントリックな妻。夫婦の関係性を小出しにしながら、稚拙な(しかし異常な)計画は着々と実行に移される・・。

一番の見所は、過去の痛手と呪縛から逃れられない妻スタンレーと、愛情と罪悪感に揺れる夫アッテンボローの驚くべきパフォーマンス。スタンレーは1964年度米アカデミー賞主演女優賞にノミネートされた。日本では1982年の力作『女優フランシス』でのジェシカ・ラングのおっかない母親役、83年『ライトスタッフ』のパイロットがたむろするバーの女主人で知られる。瞳の芝居が尋常ではないアッテンボロー。感情の板挟みに憔悴する抜き差しならない男を、受けの芝居で演じ切っている。本当に相手を必要としていたのはどちらか・・。

そして陰鬱な一軒家と曇り空やうすら寒い雨もよいの郊外のモノクロの街並みや室内を捉えた撮影が素晴らしい。物語や映像の新規性に頼った空疎なサスペンスとは一線を画すこういった佳作はもっと評価されるべき。ミステリ、オカルト趣味な?英国人気質が良く出た作品。

超能力を使って失踪者捜索とか動物と話せるというでたらめなテレビ番組を思い出しました。『バニーレークは行方不明』ファンにはお薦め(人物の反転、家族の綱渡り。そして抜き差しならない共依存)。他に『サンセット大通り』『何がジェーンに起こったか』なども。

Seance on a wet afternoon , 1964, UK, オリジナルアスペクト比(もちろん劇場上映時比を指す)1.66 : 1 , Mono, 115 min( UK, 121min.) , B&W、ネガ、ポジとも35mm
他サイトに書いた自身のレビューを修正したものです。
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