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悪魔と寵児のMOCOのレビュー・感想・評価

悪魔と寵児(1947年製作の映画)
3.5
「ケイトには黙ってて、返そうと思ってた・・・」
「何を?」(ケイトの写真)
「フランクとケイトは愛し合ってる。僕には耐えられない。許して・・・」

『オリバー・ツイスト』『クリスマス・キャロル』『二都物語』『大いなる遺産』で知られる英国の文豪ディケンズの『ニコラス・ニックルビー』の映画化です。

[今は簡単に観ることが
  出来ないので
  ストーリー全体を!]
 不況の中、大学を卒業して父親を亡くした青年ニコラス・ニックルビーは、父親が生前に「困った時には(父親の)兄を訪ねる様に」と言っていたので母親と妹ケイトの三人でロンドンの伯父ラルフを訪ねます。1930年不景気で仕事もろくにない時代です。

 強欲な金貸のラルフは3人の面倒をみる気などなくニコラスをヨークシャーにある寄宿学校の教師に就職させ、ケイトを衣装店の縫い子にし下町の空いているアパートの一室を母とケイトに与えます。

 ニコラスが住み込みで働く寄宿舎はお金目当てのスクィアズ家が経営していて家庭の事情で一緒に住めなくなった子供を集め勉強を教えているのですが教養のないスクィアズが教える授業は絶望的で、英単語すら正しく教えられていないのです。
 親から送られてくる子供達の衣服は自分の子供に与え、ろくな食事も与えていない上ひどい体罰があるのです。

 ニコラスは15年ほど前に五歳ぐらいの時から寄宿舎に預けられているおとなしい青年スマイクが受ける体罰を見かねて、スクィアズから鞭を取り上げると、スクィアズを鞭で叩きつけスマイクを連れ出しロンドンへもどります。

 かわいそうなスマイクは子供の頃からの体罰が原因なのか、若いのに背骨が曲がり、老人のような体つきなのです。

 ロンドンには仕事もなく、ラルフに母との同居を許されないため船員になるためスマイクを連れてポーツマスへ歩きはじめます。
 歩き初めてすぐ偶然マデリンに出会います。マデリンは就職相談所で一度会った事がある美しい女性ですが、父親の借金とりから逃れるため父娘で夜逃げするところでしたが、1,700ボンドの滞納金のために目の前で役人に連行されてしまいます。

 ニコラスとスマイクは旅の途中のレストランで出会った旅芸人に気に入られ一座で働くことになります。

 ラルフは美しいケイトを公爵達の食事会に連れ出します。ケイトを公爵との仲を深めるための道具にしようと思っているのです。
 そんなある日ニコラスはラルフの召し使いノッグスから「あなたの伯父が良からぬことを企んでいる」という手紙を受けとります。
 ノッグスはアルコール依存の為、身を滅ぼした男で金貸しのラルフのところで働くものの、ラルフには強い恨みを持つ男です。
 ニコラスはスマイクを劇団に残し、ラルフを訪ね口論となり一家は家を出ることになります。
 帰りに寄った就職相談所で会計を任せることが出来るフランス語のわかる青年を探している双子のチアリブル氏と出会い、見込まれたニコラスは一軒家まで提供されます。

 チアリブル氏は血のつながりはないが、昔から気にかけている父娘がいて父親の気がつかないように二人の生活を援助しています。ニコラスはその娘が描いた油絵を高額購入した代金を払ってくるように頼まれ父娘の家を訪ねると娘はあのマデリンで二人は再会を喜びました。

 ニコラスはスマイクを家に呼び寄せます。引っ越しにはチアリブル氏のおいの若いフランクが現れケイトとフランクはお互いを意識します。 
 引っ越しの日スマイクはスクィアズに見つかってしまい、ある日連れ去られひどい暴行を受けてしまいます。
 ニコラスはノッグスとスクィアズの宿泊先を訪れ、傷つき弱ったスマイクを取り返し家に連れ帰ります。

 ケイトを失ったラルフは客を接待する若い女性としてマデリンに目をつけます。ラルフはマデリンの父親に借金の返済がわりに娘との結婚を要求し父娘の了解を得ます。その事を知ったニコラスは結婚をやめさせようとマデリンを訪ね話をしているところにラルフが現れ口論になります。ラルフは決着をつけようとマデリンの父親の部屋のドアを開けると高齢の父親は息をしていませんでした。ニコラスは「この結婚はもう無効」と強引にマデリンを連れ出します。

 ニコラスへの怒りが収まらないラルフはスクィアズにニコラスを訴えさせようと考えます。ラルフはノッグスを呼びつけスクィアズ宛の手紙を書く様に命じるのですがノッグスの口から悪らつなスクィアズは既に逮捕されていること、さらにラルフの奥さんが15年前に亡くなった時、奥さんの財産を自分だけのものにするため奥さんの連れ子を他人に頼んで他所に追いやったことを警察に伝えたので不正に財産を横取りした罪で自分が逮捕されると聞かされます。

 スマイクは亡くなった自分の奥さんそっくりだと聞いたラルフは、ニコラスの家を訪ねると暴行が原因でスマイクが命を落とすところでした。ニコラスに気づかれずその瞬間を見たラルフは急いで家に戻り、警察から逃げる準備をするのですが警察官がやって来たことに気が付き自殺します。
 
 そしてニコラスとマデリン、フランクとケイトの合同結婚式で幕が降ります(本当はもう一組のトリプル結婚式です)。

 20才の新人サリー・アン・ハウズが清楚で無垢なケイトを演じます。ニコラスを演じるデレク・ボンドが30才の作品で大学を卒業したばかりの青年を演じるには少し年齢を感じます。

 『悪魔と寵児(ちょうじ)』類は友を呼ぶというか、ラルフの元には心貧しい自分勝手な者が集まり、好青年のニコラスは心やさしい人にめぐまれます。

 暴行を受けたスマイクが献身的に看病してくれるケイトに想いを寄せながら亡くなるシーンは、ニコラスがスマイクの気持ちを知ってしまうので一層悲しくなります。

 盛り込み過ぎて盛り上がりにかけるのですがニコラスが納得できないことに立ち向かって行く姿に胸がすく思いです。古の映画は本当に良い。




 
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