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シド・アンド・ナンシーのKKMXのレビュー・感想・評価

シド・アンド・ナンシー(1986年製作の映画)
3.8
いやー、痛々しいガーエーでありました。
カリスマの短い生涯を描いたというよりも、ジャンキーの悲惨なドキュメンタリーを観ているようなキツさがありました。


ジャンキーのシドはルックスとハデな存在感を買われてピストルズのベーシストになりますが、衝動をコントロールできないタイプであり、意外とクールなヴォーカル・ジョニーとは違ってトラブルメーカーです。そして、そんなシドには超お似合いのジャンキー彼女・ナンシーがくっついています。
この2人、双子のようにタイプが同じです。すぐ激昂して暴れては寂しがりで互いを求めます。そんな2人なので、寂しくて虚しいから(依存もあるだろうけど)ヤクをキメる…こんな日々を送っていました。いや〜見事なまでに底辺カップルです。スター感ゼロ。まぁ、ジョニサンとかディーディーとかもこんな感じだったんでしょうけど。

シドナンの寂しさは普通の人のものとはやや異質に感じました。2人とも物理的に離れるのが難しいのです。目の前に相手がいて、温もりを感じていないとひとりで居れないのでしょう。
人間には、例え離れていてもその人との掛け替えのない体験を内側に留めて相手を感じることができる能力があると思います。というか生活の中でその能力が育っていくのだと考えられます。
しかし、シドナンの2人は、この能力が育ってないように思いました。特にナンシーは酷く感じます。ナンシーの家は割と普通な感じだったので、彼女は先天的な何かがあったのかもしれません。

離れられない2人が共依存状態となり、ドラッグに溺れながらひきこもりになっていく後半は、ただただしんどい。互いがドロドログチャグチャに滅んでいく様は地獄としか言いようがないです。これこそストレート・トゥ・ヘルではなかろうか?
(同名の映画が、同じアレックス・コックス作品にある。そっちはぜんぜん地獄じゃない軽いバカ作品)
正直ナンシーは詰んでいるように思いましたが、シドは少し立ち直ろうともしていたので、田代マーシーみたいに依存症と戦う姿も見たかったですね。
あと、ラストにロマンティックなシーンが入りますが、これはちょっぴり複雑な気持ちになりました。最後までエグく行ってほしい気持ちもあれば、せめてあれくらいの甘みがあってもいいのでは、なんて思ったりもします。


同じクズでも、裕也映画なんかはゲラゲラ笑いながらもクソっぷりに自分の影を感じてグッと胸が詰まったりするのですが、本作は正直異世界すぎて、自分と重なるところはゼロでした。ピストルズにも思い入れがゼロだったせいか、割と客観的に鑑賞できました。しかし、なにせ重くてかなりゲンナリしましたよ…


演者について。ま〜世紀の天才ゲイリー・オールドマンの凄味については今更言及する必要はないでしょうが、ナンシー役のクロエ・ウェッブも凄かった。異常な浮き沈みを厭になる説得力で演じていたと思います。ナンシーの醜さが顔にも出ていて、1ミリも綺麗さがなくて半端なかったです。あのうるせー声とあのツラはかなり厳しかったです。
いやー、しんどいガーエーでした。観応えはありましたけどね。
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