こうん

インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説のこうんのレビュー・感想・評価

5.0
ハリソン・フォードがインディ・ジョーンズに扮するのもこれが最期、という映画がもうすぐやってくるので気が気ではないエブリディ。
実際には、80年代の3部作の輝かしさを知っている者としては最新作を映画単体として「そこそこ楽しみ~」という期待感ではあるんですけど、なんせインディ・ジョーンズはわたしの映画ファンとして出発点そのものなので、それが終わるっぽい…ともなると「天皇が退位!」とか「スラムダンクが最終回!」とか「清原和博の引退試合…!」みたいなイベントなんすよ。
そういうことなので思い入れしかない「魔宮の伝説」のこと書いておきます。

初めて観た映画なんです、「魔宮の伝説」。
いや、それまでに東映アニメ祭りとか「ケニー」とかを映画館で観てはいるんですけど、映画ファンとしてのスイッチが入ったのがテレビ放映の「インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説」を観たあの日ですよ。
当時7歳か8歳くらい。20時就寝の健康優良児だったのですけど、その日は眠れずに親に甘えに行った茶の間で始まっていたのが、ダークで悪趣味全開で連続冒険活劇の「魔宮の伝説」ですよ。ちょうど、クラブオビ=ワンで毒を盛られたインディとギャングたちが解毒剤をめぐって乱闘しているところ。
いつものように「子供は早く寝なさい」と追い返されることもなく、その場にいることを許され…というか放置され、やがて映画を観終えましたね。

「!&!&?…!&!!」

“映画”として圧倒的な体験でした…。
全身が熱くなり心臓がバクバクして血管も脈打っているのがわかるほど興奮していました。
今でもあの時の感覚はビビッドに覚えています。ビンビンでした。

はじめて「魔宮の伝説」を観たあの時が、わたしにとっての映画体験の原点で、もっと言えば、「映画とはなんぞや…?」と迷った時に立ち返る場所が、「魔宮の伝説」を観たあの茶の間なのです。そして今でも、映画の本質は見世物であると思っていますが、それは「魔宮の伝説」そのものであったりします。
三つ子の魂百までとはいいますが、8歳で虫大行進とか猿の脳みそとか心臓引きずり出しとかトロッコアクションとか観てしまったら、それはもうね…こんな大人(映画に血と爆発とおっぱいを求める映画ファン)になってしまうのも致し方ありませんよ。
そういうことで誰がなんと言おうと「魔宮の伝説」がシリーズで一番好きだし(「最後の聖戦」が二番手)、この映画を悪く言うやつにはハナクソ飛ばします。
ケイト・キャプショー演じるウィリーのキャラクターについて非難もされますが、あれはたぶんスピルバーグもルーカスも「赤ちゃん教育」みたいなハワード・ホークス風のスクリューボールコメディをやろうとしただけのオタクの無邪気な映画遊びであろうことは声を大にして言っておきます。ま、あんまり上手くいっていないのでわがままで喚いているだけの女性に見えてしまいますけど…71回叫んでいるそうです。加減しろよヒゲ。
それでもパンコット宮殿でインディとウィリーが「早く好きって言いなさいよ」と意地の張り合いするところは好きですし、ケイト・キャプショーの陽性の明るさと向こう見ずな気の強さがぜんぜん大好き。
それよりもっと好きなのはショーティとインディの関係性ですよ!どのように出会ってどうやって親友になったのかわからないですけど、その強い絆が透けて見えるアクションや会話のコンビネーションがたまらなく、特に孤児であるショーティのインディへの思慕が見え隠れするのがいちいちグッとくるし、正気を失ったインディに「愛している!」と言いながら松明で攻撃するくだりは、その心中を慮ると涙なくして見れなかったりします。同時期に観た「グーニーズ」も超好きだったので、あの頃のわたしはキー・ホイ・クアンになりたい!と思っていたものです。
(なのでこの間のアカデミー賞までの彼の受賞ラッシュはいちいち嬉しかった…けども現在のキー・ホイ・クアンがチャーリー浜に見えます)

もちろん!「観客を1秒も飽きさせない」ことに全振りし過ぎてバッドテイストにじみでちゃったスピルバーグ演出の冴え!今観ると野暮ったくてクドいところもあるんですけど(当たり前だけど演出家としては今が最高)、それでもやはり緊張と緩和、シリアスとユーモアのバランスが見事だし、娯楽映画でアクション映画でヒーロー映画でもあるところの勘所の押さえ方がビシバシツボに入って、きもちいぃ~ということになっていますね。
8歳のガキの心をわしづかみにして、いまだに離さない見世物としての映画の粋。

ウブな映画魂に火をつけたのがスピルバーグだった、というのはとてもラッキーだし、スピルバーグが生きて映画を作っている同時代に映画ファンとして呼吸していることの尊さをしみじみと実感しておりますよ。
スピルバーグ本人はこの「魔宮」に否定的だそうですけど(でも妻に出会った作品だから後悔はしてないんだと)、わたしにとってはかけがえのない映画なので、本作への様々な批判には
「うるせぇ」
と思っています。

もう一人の映画うま夫であるマンゴールド監督にバトンタッチした「運命のダイヤル」(なんで「悪魔を憐れむ歌」なの?)は楽しみですけど、強欲ディズニーがまた別のインディ・ジョーンズの新展開を目論んでそうでそこが怖いです。頼むからインディとショーティの出会いとかやるんじゃないよ!「ハン・ソロ」を思い出せ!と「魔宮」でも現場プロデューサーやってたキャスリーン・ケネディに今のうちに手紙書いとこうと思います。

ちなみに有名な“冷やした猿の脳”はカスタード&ラズベリーソースのアイスだそうです。美味そう。
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