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この空の花 長岡花火物語の小のレビュー・感想・評価

この空の花 長岡花火物語(2012年製作の映画)
4.0
大林宣彦監督の『花筐 HANAGATAMI』を見たけれど、それは戦争3部作の最終作とのこと。となれば他の2作も気になるのが人情というもので、ちょうどよいことに年末年始に早稲田松竹で第一作目の本作の上映があり鑑賞。

新潟・長岡花火大会は、秋田・大曲の花火大会、茨城・土浦の花火大会と並ぶ「日本三大花火大会」のひとつ。しかし、その目的は「花火を競う」他の2つの花火大会とは全く異なり、戦時中の空襲や震災などの自然災害で亡くなった方の慰霊・復興の祈念である。

開催日は大曲が8月の第4土曜日、土浦が10月の第1土曜日と観光を念頭に置いたものであるのに対し、長岡は曜日にかかわらず8月2日、3日と決まっている。東日本大震災が発生した2011年も各地の花火大会が自粛するなか、「慰霊と復興を祈念する花火であるから自粛する必要は全くない」として、例年通り開催された(ウィキペディアより)。

2011年夏、熊本・天草の地方新聞記者の玲子が、あるきっかけから、中越地震から復興し、東日本大震災の被災者をいち早く受け入れた長岡を取材に訪れる。そこで『まだ戦争には間に合う』という特集記事を執筆した新潟県地方紙の女性記者に案内してもらい取材し、同名の舞台の台本を書いた女子高生と出会い、不思議な体験をしながら、1945年の空襲の悲劇や長岡花火に込められた思いを感じとっていく。

戦争の悲劇を忘れてはならない、そのためには想像力を働かせなくてはならない。物事には表と裏があり、どちらか一方では成り立たない。だからもし平和を願うならば、平和ではない状態を忘れてはならない。戦争を知らない我々は戦争体験を聞き、想像力を働かせ、伝えていかなければならない。

思いを引き継ぐこと、想像力を働かせること、長岡花火はその象徴である。爆弾と花火の原理は基本的に同じ。花火は美しく楽しいものである半面、人によっては空爆を思い起こさせる破壊的で怖いものである。慰霊、復興、平和の願いが込められた音も大きな花火を見れば、その裏側にある死者、被災、戦争に思いを馳せずにはいられない。

「日本のゴッホ」こと放浪の天才画家・山下清は、最高傑作の貼り絵「長岡の花火」とともに、こんな言葉を残している。「みんなが爆弾なんかつくらないできれいな花火ばかりをつくっていたらきっと戦争なんか起きなかったんだな」。爆弾をつくるのも人間ならば、花火をつくるのもまた人間である。

"映像の魔術師"の大林監督は、ドキュメンタリー風の内容を、幻想的なヒューマンドラマとして描いていく。映画が持つエンターテインメントの力を使い、多くの人にメッセージを伝えたいという思いを感じる大林作品。戦争三部作のもう1作『野のなななのか』も見ないといけなくなった気がする。

●物語(50%×4.0):2.00
・長岡花火の経緯、恥ずかしながら初めて知った。長岡花火が見たくなった。今年、行こうかな。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・情報を詰め込んでも退屈させないのはさすが。

●画、音、音楽(20%×4.0):0.80
・まだすごく好きというわけではないけれど、心惹かれる映像表現。
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