フラハティ

アマチュアのフラハティのレビュー・感想・評価

アマチュア(1979年製作の映画)
4.4
カメラに魅せられた男。


娘の誕生を機に、カメラを購入したフィリップ。
元々娘の成長を記録するものだったが、ポーランドという国柄や時代背景により、カメラを持っていることが珍しい時代。
彼は工場のドキュメンタリー制作を工場長から依頼される。

"アマチュア"と"プロ"の違いとは。
人生のすべてを何かに賭けてまで、突き詰めるのがプロ。
中途半端なのがアマチュア。

『何かを得るためには同等の代価が必要になる』
何もかもを失ってまでカメラにのめり込むフィリップ。
疎かになっていく妻と娘との関わり。
衝突する会社の関係。
その代わりに得たものとは。


平凡で幸せだった毎日が、刺激的で意味のある毎日へと変化していく。
本作で印象的なのは、カメラにより成功が見えていくが、対照的に失っていくものも見えてくること。
表を映せば裏がある。
喜ぶ者がいれば、悲しむ者もいる。
社会では不都合な部分は削られていき、何事も綺麗に収めようとする。
この光景は当時のポーランドの検閲とダブる。
映画の中の映画を通して、最後には製作者本人を覗き込むような構図になる。

誰かのために映画を撮る。
ただの仕事が、いつしか生きがいへと変わっていく。
自分が撮った映画が賞を授賞して、観ている人が笑顔になってくれる。
こんなに嬉しいことってあるんだろうか。
本作を観ていて思ったのは、おもいっきり主人公目線の映画だからこそ、観客も奥さんとか工場長が撮影を邪魔しているように見えるんだよね。
だからこそ、ラストシーンは唸る。
自分は何のためにこのカメラを握っているのか。


カメラとは永遠の時間を作り出す空間。
日常の何気ない風景が、ひとつの芸術として映し出される。
映画とはどうあるべきか?
最終的にはこう繋がっていくのかな。
本作はキェシロフスキー監督がドキュメンタリー畑ということで、フィリップというキャラクターは監督の投影のよう。

誰もが自分から情報を発信できるようになった現代。
表の世界も裏の世界も表現できる。
誰もがアマチュアからプロへと姿を変える可能性がある。
それが良いことか悪いことか。
だったら僕は"アマチュア"のままでいいかな。
フラハティ

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