R

追いつめられて…のRのレビュー・感想・評価

追いつめられて…(1959年製作の映画)
4.5
Jリートンプソンといえば恐怖の岬が有名で、こっちはぜんぜん話題に上がることがないし、ソフト化もされていない、滅多にお目にかかれない作品やけど、いやー、これがなかなかすばらしい映画だった。情のもつれから女を殺してしまったポーランド出身の船乗りコチンスキー。その殺人現場を一部始終目撃してしまった幼い少女ギリー。日々の生活に嫌気を感じてるギリーは、コチンスキーをかばい、一緒にイギリスから逃亡して、ふたりで船乗りの仕事をすることを決める。前半はこのふたりの間に生まれる奇妙な友情、てか、どっちかってとギリーがコチンスキーに対して抱く友情を描いていく。本作最大の魅力は、確実にギリーを演じた少女ヘイリー・ミルズの演技でしょう。何と、本作でベルリン国際映画祭特別子役賞を受賞してるらしい。ヘイリーミルズというその子の演技は、子役とは思えないほどの巧みさ! ころころ変化する表情を自在にあやつり、コチンスキーをかばうために嘘を貫き通そうとするボーイッシュな少女を演じている。彼女がコチンスキーに対して抱く友情はとても篤く、微笑ましく、哀しい。そんな彼女の表情をみごとにとらえるカメラワークもすばらしく、細かいカッティングとモンタージュが見事な効果を生んでいた。ストーリー展開もいい。冒頭から、数多くの伏線が張られており、それが終盤に向けてどんどん回収されていくプロセスはめちゃめちゃ面白い。これぞサスペンスの醍醐味! 中盤の緩やかで穏やかな進行が、俄然スピードを増す後半、タイトルどおり徐々に追いつめられていくコチンスキー。コチンスキーを探す警察、ギリーに真実を話させようとする警部、国を脱出しようと試みるコチンスキー。この3つがハイテンションのカットバック! 盛りあがるサスペンス! どう収拾がつくのか予測することを許さぬ緊張感! しかも、この映画のサスペンスは、コチンスキーのチェイスだけにあるのではない。もうひとつのサスペンスが、コチンスキーのギリーに対する心情だ。ギリーがコチンスキーに抱く友情は明らかなのだが、コチンスキーはギリーに対して、もうすこし微妙な気持ちを抱いている。それが一体どういう感情なのか、ギリー自身も決めかねてるし、わからない。しかし、それも最後に霧が晴れるように明らかになる、彼自身にとっても、観客にとっても。その非常に甘く、同時に苦々しいエンディングにため息つかずにはいられない! ああ! この切なさ!しびれた! これは是非ともソフト化していただきたい映画! なにとぞ!
R

R