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カジュアリティーズのLudovicoMedのレビュー・感想・評価

カジュアリティーズ(1989年製作の映画)
3.5
リダクテッドとセットに見る、戦場の黒歴史。

ブライアンデパルマは、キャリアの中で戦争映画を2本撮っていますが、両方ともほぼ同じ『戦争犯罪』というアメリカが最も隠しておきたい題材に挑んでいる。

かく言う、『リダクテッド』はあまりに淡々と退屈なリズムで、目を背けたくなるシーンの羅列でアメリカ批判する作品の様が、酷評を受け干されてしまった不遇な作品だが、必ず一度は観ておくべき、"傑作暴露本映画"だ。
リダクテッドは、フェイクドキュメンタリー型で超生々しく、イラク戦争で起きた理不尽極まりない虐殺が描かれた。

さて、本作はリダクテッドに比べるとハッキリ言って甘口で、センセーショナルだが、地獄な戦場においてそこまで背徳には感じない。 よくあるベトナム戦争映画で時々見かけ、あっさりと描かれる場面をピックアップして、怖い顔で議論するような作品にしか見えないのです。

しかし本作はその『事実』を告発することに重点を置いているわけではない。むしろ、コトが終わった後に、牙を見せる『同調圧力』の恐怖を、戦場という密室で容赦なく突きつける。
ここで、デパルマお得意のサスペンス力が見事に光り、正当防衛が通じない現状へと、飲み込まれていく。精神的にも追い込まれる様を、ある中盤、ギャグ漫画のような滑稽な戦死シーンを挟み、その呆気ない死を対比させるのだ。
レイプされ死する者もいれば、文字通り『無駄死に』する新兵もいるのだと。

そしてマイケルJフォックスは気づく
「俺を殺す必要はねえ!みんなにチクったけど、結局誰もまともに聞かねえんだよ!」
そう、上官に訴えようが軍法会議を恐れ揉み消そうとし、まるで自分が悪人なのでは?と理性を見失いかけていく。

本作は、告発の後の苦い現実を、確かな恐怖で描かれていましたが、鑑賞前でも後でも是非、リダクテッドとセットで楽しむことを、全力推奨いたします。
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