CureTochan

キューティ・ブロンドのCureTochanのレビュー・感想・評価

キューティ・ブロンド(2001年製作の映画)
3.9
娘と楽しめたので高めのスコア。これ、みてない「バービー」とはどういう関係にあるのだろうか?ジャケ写のとおりブロンドの白人にはピンクっていうか、マジェンタとシアン(明るいジーパン)がよく似合う。

2001年の911テロの二ヶ月前に公開されている。いまや古い映画だし、さらに2年前の「ノッティングヒル」と比べても作りはもっと古めかしい(そういや序盤で、主人公がFox & Houndという雑誌を見てるシーンがあるが、ヒュー・グラントはHorse and Houndの記者になってた)。監督にあまり才能がなく、MTVのミュージックビデオのようだ。冒頭からそうだし、終盤のネイルサロンである人物が登場するシーンなんてひどすぎる。極めつけが、文字で説明するラストだろう。Hot For TeacherのMVかよ。

しかし、ちょっとしゃくれ気味の主役にめっちゃ華があって、なんとかドラマを成立させていた。知的な雰囲気がエイミー・アダムズと似ているし、本作のお話も「魔法にかけられて」とダブるところがある。どちらも弁護士が出てきて、「愛と平和」のコントラストに使われている。そういや本作は違うけど、ゲイの弁護士ってのもよくあるモチーフである。リース・ウィザースプーンはシナリオを読んだとき、金持ちで感じの悪い主人公だなぁと思ったそうだ。彼女は田舎の医師とナースの娘で、頭もよく、この主人公とは違う。エリート白人界では、医者や弁護士なんて単なる労働者であり、貧困層や留学生がガンバるフィールドなのである。そのガンバっちゃうことを、seriousと表現していた。セリフの半分ぐらいは、日本人にはわかりにくいか、了解不可能なのでテキトーに訳されている。そんなのは醜くてシリアスな人間のやることだ、とはハーバードにたくさんいるアジア人が、その典型なのだろう。全然出てこないけど。

なんといっても日本人にわかりづらいのは、「デルタ・ヌー」とか「ラムダ・カッパ・パイ」といった秘密結社の文化だろう。「モンスターズ・ユニバーシティ」でも、話をわかりにくくしていた。日本でいえば、慶応に幼稚舎から入った金持ちのソサエティに該当する(普通の子が大学から慶應義塾に入ってみると、そういう連中との壁を感じるという)。アメリカではあらゆる大学に存在し、たとえばデルタ・ヌーってのが何の略か、ということも含めて秘密なのである。誘われなければ入ることはできない。ギリシャ市民、つまり奴隷を使っていたクラスを気取っているので当然、黒人は入れないのが本来の姿である。彼らははじめから親のコネがあるだけでなく、過去問とか宿題を融通するので成績も高くなる。

だが主人公がかわいそうな目に遭い、やり返す話として、本作を成立させるのは簡単ではない。というのもエルは、たしかに差別されはするが、そこまで同情すべき不幸な人間でもないからだ。勝手に目立ってしまって、ブロンドジョークの通りのことをやるから悪い。昔、ドイツに行ったとき、ドアか何かにブロンドジョークの書かれたマグネットが貼ってあった。そこら中にブロンドのいる国で、ブロンドが馬鹿だというジョークは言える。それはブロンドが性格がいいからでもあるが、本当には虐げられていないからでもある。あと、ブロンドで実は頭がいいという話は「スペースキャンプ」「スーパーマンIII」、のちのトイストーリー3などにもある。

だがそこをちゃんと成立させているのがウィザースプーン姉さんの力。この子が悲しいと、ちゃんとこっちも悲しくなる。頑張っていると応援したくなる。それが主役というものだ。同じように法律関係の、今の朝ドラ主役にないのはこれだ。ラブ&ピースで万事、うまくいくし、クライマックスの法廷での演技は弁護士としてのを含めて二重の意味で素晴らしい。

ハンサムなキャラハン教授の名前は、アイリッシュ系である。キャラハンといえばダーティ・ハリーだが、ジョン・マクレーンしかり、警察官にアイリッシュが多いのは常識だ。でも弁護士もそうなのかしら?「評決」のポール・ニューマンの役名はギャルヴィン、敵はコンキャノン。「真実の行方」の敵の検事、ショーネシーもアイリッシュの名前。そういや「リーチャー」であの黒人の署長も、もとは弁護士だったから、同じような業界ってことか。

キューティ・ブロンドっていう邦題は、作りのB級感とはよく合っているのだけど、Legally Blonde=legally blindのもじりで、彼女がブロンドであることと、盲目的に進む、という意味がかかっている。Legally blindとは、まったく見えないわけではないが、法律的には盲目と同じに扱われる視覚障害の意味で、これがダジャレに使えるほどありふれた言い回しであることが日本人には意外だ。
CureTochan

CureTochan