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ホフマン物語のkuuのレビュー・感想・評価

ホフマン物語(1951年製作の映画)
3.8
『ホフマン物語』
原題The Tales of Hoffmann.
製作年1952年。
日本初公開1952年3月1日。
上映時間124分。

オペレッタ『天国と地獄』とかで知られる作曲家ジャック・オッフェンバックによるオペラ『ホフマン物語』を、バレエ映画『赤い靴』の監督・スタッフ・キャストが再結集して映画化した英国産名作アートシネマ。

ドイツの詩人E・T・A ・ホフマンの小説から3つの恋物語を用いて脚色した戯曲をもとに、主人公である詩人ホフマンと、パリの自動人形オランピア、ベネチアの高級娼婦ジュリエッタ、ギリシャの歌姫アントニアが織りなす幻想的な3つの恋の顛末を描く。

キャストには当時のオペラ界・バレエ界のトップスターが集結し、テノール歌手ロバート・ランスビルがホフマン役、ソプラノ歌手アン・エイアーズがアントニア役を務めた。
さらに、振付も担当したフレデリック・アシュトンや『赤い靴』のモイラ・シアラーらサドラーズ・ウェルズ・バレエ団のダンサーたちも出演し、オペラ歌手が歌唱吹替えを行った。
演奏は、トーマス・ビーチャム指揮によるロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団。
第4回カンヌ国際映画祭特別賞、第1回ベルリン国際映画祭銀熊賞を受賞。1951年製作で日本では52年に劇場初公開、2001年に製作50周年を記念したオリジナル全長版でリバイバル公開されている。

プロローグ――居酒屋で人気プリマ、ステラを待つホフマンが3つの恋の思い出を語り始める。
第一話――パリ。
美しい人形オリンピアにホフマンは心奪われる。
第二話――ベネチア。
悪魔の手先にそそのかされたジュリエッタがホフマンに誘惑の手を伸ばす。
第三話――ギリシア。
胸を患う歌姫アントニアは、ホフマンのために歌を歌い命を落とす。

先日、知り合いの声楽やってる方のオペラ歌を聴きに行った際に、楽曲の中に、今作品の同名原作、ジャック・オッフェンバックの唯一の歌劇『ホフマン物語』(Les Contes d’Hoffmann:1880,未完)の第1幕『オランピア』の場面、ローマの貧乏物理学者・発明家スパランツァーニが人形師コッペリウスに作らせた自動人形(ヨーロッパの機械式・自動人形:オートマタ:Automata )のオランピアが竪琴を奏でながら唄うアリア『生け垣に小鳥たちが』を聴いたので、今作品を鑑賞してみた。(今作品にもこの曲と場面はありますよ~)
扨、今作品は、好き嫌いが分かれる作品の一つじゃないかな。
舞台のようなスタイルで、それがファンタジーオペラの雰囲気を高めていると思うんやけど、他の人は不快に感じるかもしれない。
舞台装置は、主にカーテンと塗装された背景で構成されてたし、ただのセットであることを隠そうとはしていない。
せや、魔法のように象徴的な瞬間を強調するために、カメラの効果が使われてはいます。
舞台と映画のバランスは、個人的な評価で申し訳ないですがちょうど良エエかなぁと思います。
特にオリンピアの演技では、非常に想像力に富んだ演出がなされてました。物語の中でも最もコミカルなものですが、ここでは悪夢のような様相を呈しています。
舞踏会のシーンはこの時代じゃ巧妙に作られてるし、人形が破壊される様子は驚くほど生々しいかな。
オリンピアの幕ではダンスが強調されてるけど、ジュリエッタとアントニアの幕(ここではそれぞれ2番目と3番目に示されています)ではやや静的で、セットの雰囲気に重点が移されてた。ジュリエッタはゴシック調の暗いヴェネツィアに、アントニアは健康状態を象徴するようなギリシャの遺跡に住んでいるようでした。
今作品はスタイルと長さの理由から様々な変更が加えられてたけど、疑問に思ったんは2つあり、どちらもニクラウスのキャラに関するもので、
彼の歌はほとんどカットされてて、彼は傍観し、時折目を丸くしたり、短い言葉を発したりする以外、ほとんど何もしていない。
もう一つは、彼がミューズと同一視されることは、エピローグでもない。
オペラに精通していない方なら、男性であるはずのキャラをなぜ女性が演じるのかわからないと思う。
ミューズがいなくなったことで、彼女のメッセージである
『愛は私たちを偉大にするが、苦しみは私たちをより偉大にする』
ちゅうと言葉も消えてしまっと。
むしろ、ホフマンの破滅が描かれているに過ぎない。
ミューズがいないことを差し引いても、エピローグは急ぎ足やし、拍子抜けも否めない。
もし上映時間が問題なんやったら、プロローグにある美しいが無関係なトンボのバレエをカットした方が良かったんちゃうかな。
こんな素人(小生)の批判はさてコキコキ、今作品は想像力に富み、独創的やったし、型にはまらん大胆さがありました。
たとえ素人の小生が所々気に入らなくても、きっと賞賛しなければならない作品なんやろなぁと。
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