冷酷な殺人マシーンとして育てられた青年パン。父親から虐待を受けている少女ユウ。言葉は通じない2人が出会い心を通じ合わせる。暗殺事件を起こし警察に追われるパンはユウを連れ故郷カンボジアへ向かうのだったが…。

「トワイライト・ウォリアーズ」のソイ・チェン監督の初期作品。

人を思う心に目覚めた殺人マシーンVS犯人逮捕に手段を選ばない己の正義だけで動くアウトロー刑事!!

と言いつつ物語の雰囲気は結構重め…。

犯人と刑事、人生に希望の無い2人の激突。一方は希望を見つけ、一方は更に深く堕ちていく。でも見付けた希望は破滅へのフリでしか無いんですよね…。

終盤に差し込まれる細やかな穏やかシークエンスが観ていて不安でしかない…。

R指定なので気合いの入った大興奮なゴアを期待してましたが、雰囲気が重めなので爽快感は無かったかなと。

予想通りでしたが、余韻の残る結末。苦過ぎるぞ!!

普段持ち合わせている倫理観で立ち入ろうもんなら、ものの数分で咬み殺される。

殺し屋だろうが警察だろうが、もがくか咬みつくかしか切れる手札はなくて、家族という共同体すら不全に陥っていて、それでも当人たちは生きようともがくし、もがけばそれは巡る。

外からの視点には、気づくこともできずに。

孤児として育った殺し屋と、彼に仲間を殺された刑事の復讐の話。

主人公が中盤までほぼ台詞を喋らず、出される料理をガツガツと「犬」の様に食い散らかし、それを追う刑事もまた犬並みの嗅覚で復讐を果たそうとする、正に犬対犬の追跡劇。

香港映画の進化したバイオレンスを楽しめるが、ストーリー面ではやや雑さも感じる。
最初の殺人では、衆人環視の中華料理店で真正面から銃をぶっ放すという、プロとは思えない方法でターゲットを殺す犯人に対して刑事達は「プロの犯行だ・・・」と断定してしまうので少し違和感があった。
そこは、人の死をなんとも思わないという環境で育った彼の事だから、周囲の人達がどんな反応を示すのかがわからなかったのかなと思い勝手に納得した。

そして、逃げ延びた主人公が街中で歩いているのを発見し、追い詰められた彼が人質を取り、その最中にラム・シュー演じる刑事仲間が首に棒を刺されて死んでしまう。そのあまりにもあっさりな退場の仕方が残念でした。

かつて汚職に手を染めた父を撃った過去を語る刑事と、少女を連れて生まれ育った村へ向かうも追い出される主人公。
一方は仲間も全て死に復讐しか目に入らなくなり、一方は少女と新しい生活を始めと幸せを掴もうとしている。
いくらなんでも刑事の突き落とされ方が悲惨過ぎるので、主人公側よりも復讐が成功するかの方が心配になってきて感情移入してしまうという。
それもこれも刑事役であるサム・リーの演技がこれでもかと絶望感を煽るから。
彼の演技が無ければこの映画も普通の復讐劇で終わっていたかもしれない。

二人の対決は意外な形で幕引きするし、希望を残す様な終わり方には見えるが、あの子供は誰が育てるんだ？と考えると産まれて来た子も結局は孤児として生きなければいけないわけで、正に堂々巡りな結末にガックリときました。