シズヲ

3時10分、決断のときのシズヲのネタバレレビュー・内容・結末

3時10分、決断のとき(2007年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

護送役を志願した牧場主と悪名高きアウトロー、旅の果てに到達する二人の関係性に震える男の物語だ。ここまでストイックな大作西部劇が21世紀の本場アメリカで作られていたことに何だかしみじみしてしまう。古典西部劇のリメイクではあるけど、ポストマカロニ的な乾いた世界観をいかにも現代風の撮り方で映し出している。全体的にアクは控え目なので西部劇初心者にも見やすい、かも。

基本的には渋い空気なので序盤~中盤は地味な展開が続くし、旅と言ってもロードムービーと呼べるほどの情感や雄大さがある訳でもない。演出面でも際立った魅力は感じられなくて、良くも悪くも終始に渡って安定した作風を保ち続けている印象。それでも登場人物のドラマとそれを演じる役者の魅力、終盤の展開はずば抜けて素晴らしいんだよな。特に飄々とした複雑な人物像を持つ悪党のウェイドは、ラッセル・クロウの好演も相俟ってキャラの立ち方が秀逸。クリスチャン・ベイル演じる牧場主のダンも切迫した精悍な表情が堪らなくかっこいい。

何より終盤がアツい。静かな緊迫感が張り詰める中での派手な銃撃戦には昂揚せざるを得ない。それまで微妙な距離感を保っていたダンとウェイドが強く結び付き、最終的に絆にも似た奇妙な関係性が生まれる流れが清々しい。男達の根底に根付く矜持と人間性、そして揺れ動く心情の描写は実に美しい。二人の関係性が齎したラストの余韻もとにかく良い。
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