140字プロレス鶴見辰吾ジラ

ハート・ロッカーの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

ハート・ロッカー(2008年製作の映画)
3.8
【それが日常】

冒頭の爆弾処理シーン、起爆と同時に地面がめくれ上がるように砂粒まで描写した爆破シーンの衝撃が体を貫くリアルな表現をもってキャスリン・ビグローの現実世界の非日常が眼前に露呈する。決して派手な映画ではないが、戦争で都市が炎上し杜撰でいくよりも、人の心の閉じられてしまった根本を焙り出すアンチハートフルな映画だ。リアリティには力を注いでいてスナイパーによる遠距離狙撃対決は逆外連味ながらスリリング。

本作はシリアスな世間批評映画としても見えるが、何よりジェレミー・レナー演じる主人公の厨二描写、大人の主人公病というべきか、そこが映される。怖い物知らずでヘルメットや防具を外しながらの爆弾処理シーン、わざわざ発煙筒をたいてスモーキングし、そして爆音のヘビィロックチューン。スリル依存症か?大人の厨二病か?劇中で出会うサッカー少年との絡みやラストでの過程でのカット。大事をこなす仕事は麻薬のように主人公を病的な戦士に変貌させたのだろうか?という疑問が胸に残る映画だった。