michi

逢びきのmichiのネタバレレビュー・内容・結末

逢びき(1945年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

不倫は断固反対ですが、だからこそ自分は絶対経験することがないであろう心情や境遇を味わうのがおもしろいのです。
そして、これは「不倫映画」と決めて敬遠するのは勿体ない!人生の機微を味わえる深い作品でした。リーン監督はどこまでも広がる超大作のイメージでしたが、こんな作品も撮っていたのですね。

中年男女の不倫恋愛を見てるのは結構きついです。特に、嘘を重ねて隠そうとし始めてからはもう救いようがありません。それでも引き込まれるのは、互いに深い罪悪感を持っているから。「これで終わりにしよう」と決めて、双方が納得した上でちゃんとその通りにするから、彼らの辛さにも思いを寄せられます。

そう、最初は二人の別れの場面から始まりますが、二人が黙ってお茶を飲んでるだけで、何のシーンだかよく分からんのです。そこにおしゃべりおばちゃんが乱入して…という意味も、ローラが家に帰ってその日のことを振り返る語りを経て再びこのシーンに辿り着いた時に、事の重大さが分かるように上手くできています。
ある人にとっては日常のほんの一瞬、ある人にとっては運命の別れ。それが交わってしまうのは酷い間の悪さです。

ローラの旦那さんは、お見通しだったんじゃないかと思います。でも優しい。あんな優しい言葉で受け入れてくれるんだ。
他に思う人に出会ってしまうのは、どうしようもないことなのかもしれないけれど、それはそれとして、どうかどちらの家族も平穏に幸せに暮らせるよう願っています。

全編通してラフマニノフのピアノ協奏曲第2番が効果的に使われています。この曲が使われた作品に『旅愁』という不倫の話がありましたが、一筋縄にいかない悲しい恋愛に合うように思います。ラフマニノフはそんなつもりで作っていないのは分かってますが。
michi

michi