馬井太郎

007 ロシアより愛をこめて/007 危機一発の馬井太郎のレビュー・感想・評価

3.5
役者の方なら、「007(ゼロゼロセブン)」というシアターゲームを、少なくとも一回はやられたことがあるでしょう。
映画としては、新開発秘密武器など、陳腐なシーンも少なくないが、本編は、シリーズ中最高峰だと思う。
ダニエラ・ビアンキが美しい。女優と思えない初心(うぶ)な色気の素人っぽさがかえってよかった。なんと言っても忘れられないのが、ロバート・ショーだ。オリエント急行内での格闘は、見ごたえがある。彼の出世作となった。
日本にも諜報員養成所があった。「陸軍中野学校」である。戦後29年にして、フィリピン・ルバング島から生還した、故小野田寛郎少尉は、この学校の優等生だった。工作員、スパイなどいうと、実に物騒だから、映画の世界だけで楽しむのが無難である。
ショーン・コネリーは、ボンドを降りる時、この役が嫌いだった、と語っていた。美人女優とのラブシーンを楽しそうにしていながら、厭だった、とは、よく言うよ、であるが、本人には、撮影が厳しかったようだ。さらに「ジェームズ・ボンド」という気品と精悍とを維持するのが負担だったとも語っていた。シリーズの途中から頭髪も消えかかって、鬘(かつら)をつけた、ともいわれる。
「007・ジェームズ・ボンド」は、ショーン・コネリーで終わった。後に続く誰もが、彼にはかなわない。
マット・モンローの歌声が今でも心に響く。
日本公開は、1964年、東京オリンピック開催の年であった。固定相場、1ドル360円の時代である。