Jaya

アンダーグラウンドのJayaのネタバレレビュー・内容・結末

アンダーグラウンド(1995年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

地下のクロと地上のマルコに合わせて紡がれるユーゴスラビア建国から崩壊に至るまでの叙事詩的な物語。確かにセルビア的ともとれますが、どうなんだろう。武器商人クストリッツァ。

とにかく溢れ出るエネルギーがとてつもない。クロ、マルコ、ナタリアはじめ、登場人物のキャラが全員恐ろしく濃い上に良く立っています。配役からして途轍もない完成度。

冒頭のスラブ風味満点の勢いの良い音楽と銃声、そこから一気に引き込まれて、
最後まで人々の生命力にひたすら圧倒され目が離せませんでした。全てのシーンが圧倒的躍動感と諧謔。

クライマックスの第3章、ユーゴの惨劇を地下の壁を伝う血で表現していたところは胸に突き刺さりました。現代の指揮官に収まっていても何の違和感もなかったクロ、台詞一つ一つのインパクトが凄い。ユーゴの悲劇を凝縮させるマルコとナタリア射殺、そしてイヴァンの死。

圧巻のラストシーン。寓話を寓話のままに、余りにも相応しい形での締め括り。イヴァンの最後の語りには言葉もない。ユーゴそのものも寓話化して喜びと悲しみを同居させたままに離れてゆく母国。

章の合間に、ユーゴ建国とチトー死去の記録映像が入りますが、そこだけでもズバ抜けた編集と劇伴のセンスが分かります。「Lily Marleen」がこれほど上手く使われてるシーンを知らない。

余りに悲惨な結末を迎える一国の興亡の歴史に乗せて、あくまで寓話的に、そこに生きた人間を溢れ返る生命力で描き出した、映画史に残る傑作でした。
Jaya

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