Jaya

人情紙風船のJayaのネタバレレビュー・内容・結末

人情紙風船(1937年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

貧乏長屋の浪人海野が髪結いの新三を匿うお話。長屋は二間あって極貧ではないらしい。髪結新三が元とのこと。背負い羅宇屋がどんなか見れて嬉しいです。

追従笑いが身に沁みて、心まで尾羽打ち枯らしたような浪人海野又十郎。妻への愛はあるが、妻の心は冷え切っている。

白木屋のお駒は忠七とデキているが、忠七の方は最早重荷になってるようにも見えてしまいます。生き生きとしている新三だが、対照的とも思えないような刹那的な陰。みんな演技が上手い…。

長屋らしからぬ活気のなさで、町にエキストラは殆どおらず、空間が多めの構図がさらにそれを引き立てるよう。上滑りするような生活感が素晴らしい。そして武家や町家、職人などを映し出すための細やかな演出に満ち溢れていて心憎い。

やっと破顔する又十郎。ラストでおたきは又十郎を刺して死なないままかと思いましたが、さすがに違いました。冒頭のフリから住人の「心中だよ」の一言は、束の間の物語の世界から狭苦しい彼らの世界に再び自分を押し込むよう。

眼を見張るような名演だらけで、時代劇を現在的な視線で描くことでそのエッセンスを凝縮させた傑作でした。
Jaya

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