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ひゃくはちのminorufukuのレビュー・感想・評価

ひゃくはち(2008年製作の映画)
3.6
高校野球の名門校でベンチ入り20人の当落線上にいる三年生2人の1年間を追った話。

一風変わった野球映画。
高校野球を舞台にした作品は大抵、強豪弱小高に関わらず試合に出るメンバーがメインなのだが、本作の主人公2人は自分の実力を客観的に見ており、最初からベンチ入りだけに目標を絞っている。当然、本編上で彼らが公式戦でプレイするシーンはない。監督にアピールするため様々な戦略をたてているのはコミカルだった。
もちろんスポ根な要素もあるのだが、どちらかと言うと寮生活を送る高校生男子の日常を明るいちゃらんぽらんな雰囲気で描いている。あの世代の男の子らしく基本バカで、喫煙、飲酒はするし、女子大生と合コンもしたりする(バレたら大変)。
主人公たちは神奈川の甲子園常連校でベンチ入りを争える実力なので中学生まではレギュラーだったであろう。彼らの明るさはエリート高で壁にぶつかりそれでも野球を続けるための妥協の産物なのかなあと思った。
敵高の偵察や客席での応援など、裏方の役目に焦点を当てているのも興味深い。

中盤以降は主人公2人でベンチ入り最後の1人を争うことになり、お互いライバル意識丸出しの、悲壮感あふれる展開となる。結果が出たあとの2人のやりとりは
負けた方の悔しさと友情が混じった感情が出ていて泣ける。
終盤は少しストーリーを整理したら良いのにと思ったが、オチに繋がる伏線の張り方が上手くてラストはすごく幸せな気持ちになれる。
主演の斎藤嘉樹と中村蒼がハマり役でバカだけど真剣な球児を熱演していた。同室のレギュラー役の高良健吾も良い味出していた。斎藤嘉樹のお父さん役の演技がとても素敵。あんなの見たら泣くしかない。その他では監督役の竹内力が良かった。

ひゃくはちというのは人間の煩悩の数であるとともに、硬式ボールの縫い目の数だと初めて知った。
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