このレビューはネタバレを含みます
気ままな芸者の小えん=磯部友子の男遍歴のお話。当時の女遊びの床入の描写なんかにリアリティを感じました。
小えんの人物像が巧み。底抜けに明るいわけでもなく、陰がある人物でもなく。風の向くままに何も考えてないような。したたかさやしぶとさも感じず、成長もない。なぜ主役なのか、そこにいるようでいないような不思議な人物でした。
登場人物の出入りの多さや片付け方が原作つきらしく、無理を感じた人物もいました。物語が破綻しないのは、小えんの演技に依るところが大きいよう。小さな仕草が抜群に上手い。
カメラワークも特徴的。強烈に印象に残るカットがあったわけではないけれど、面白いカメラの動きが多かったです。ラストシーンもキマっていて、更にこれからの小えんは全く想像できない。
小えんの抜群の演技力で、時代性とともに、ある意味理想化された「女」の像が伝わってくる名作でした。