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キングコング対ゴジラのMOCOのレビュー・感想・評価

キングコング対ゴジラ(1962年製作の映画)
3.5
「ゴジラが生きていたって不思議は無いだろう。ただ我々が“生命力”というものについて未だ何一つ判っていない、というだけのことだよ」

 1955年の『ゴジラの逆襲』以来7年ぶりに制作されたゴジラ第三作「キングコング対ゴジラ」は、ゴジラが初めてカラーでスクリーンに登場した作品です。
 ゴジラの体色や白い霧のような放射能火炎、放射能火炎を放つ際の背びれの青白い光が御披露目され「キングコング」のネーム使用に大金を注ぎ込んだ映画は大ヒットし、永い永い7年の眠りから覚めた「核の落とし子」「人間が生み出した恐怖の象徴」ゴジラがやがて子供達のヒーローとなり東宝のドル箱スターになっていく足掛かりとなった作品です。

「キングコング対ゴジラ」は1970年の東宝チャンピオンまつりの再上映で縮小編集された際に1962年の原版を紛失してしまい、2014年に紛失部分の一部が発見されBlu-ray 化されています。こちらも永い永い時間を要した訳です。
 更に2年後の2016年には紛失部分の全てを含むネガフィルムが発見され「日本映画専門チャンネル」により全編4Kスキャン・レストアが実施されスカパーで4Kデジタルリマスター版が放送され、日本映画専門チャンネルで2Kダウンコンバート版が放送されています。
 残念なことに全編4Kスキャン・レストア版は、放送のみで販売には至っていません。

「キングコング対ゴジラ」を初めて観た時、私の中でゴジラはすでにヒーローでした。
 ゴジラがヒーロー化するのは地球外生物のキングギドラの登場する1964年の第五作『三大怪獣 地球最大の決戦』以降だったことを考えると、封切りから2年以上たってのテレビ鑑賞だったようです。

 ゴジラの完全勝利を期待しての鑑賞は大きく裏切られ、決着のないままキングコングが泳いで日本を後にする終わり方は、子供心にがっかりした記憶があります。
 「アメリカのキングコングを敗者にすることもを日本のゴジラを敗者にすることもできない結果」と誰かに教えられた記憶もあります。

 キングコングの着ぐるみの作りの悪さ、特に顔の悪さにがっかりしたのですが、後にキングコングの権利を所有していたRKO社の「オリジナルのキングコングに似せないように」という要望から和風テイストになったことを知りました。

「ゴジラ」も「ゴジラの逆襲」も観ていなかった私にとって北極圏の氷の中から登場するゴジラが「ゴジラの逆襲」で氷山に氷漬けされたエンディングを受けていることに気がつくのは後々のレンタルビデオの貸し出しが始まった時でした。もっとも映像内の会話に明確に表現されているのですがそんな会話は聞き逃していたのですね。

 放射能火炎を持つゴジラと生身の大猿との戦いは圧倒的にゴジラが有利で、キングコングは体毛を焼かれ一度は退散するのですが、類人猿の学習能力に加え自衛隊が退治用に使用した100万ボルトの電圧を体内に蓄積することで戦況は劇的に変化します。

 二匹は静岡の朝比奈城を倒壊させた後、絡み合い崖から海に落ちていきキングコングがファロ島に帰っていくエンディングで幕を閉じます。

「怪獣映画なんてものは、人生に大きな影響を与えるはずもなく、教訓を残すこともなくただただ観たという満足感だけ、それで十分」と思っているのですが、RKO社が持ち込んだ「キングコングvs巨大生物」の企画がなければゴジラ復活も無く、後のゴジラブームは無かった可能性は非常に高く、この映画が多方面に与えた影響は計り知れません。

 この映画の出演が007の制作スタッフの目にとまりボンドガールの声がかかった女優浜美枝さん若林映子さんにとっては「怪獣映画なんてものは、人生に大きな影響を与えるはずもなく・・・」なんて、私の思い違いも甚だしい言葉ですね。

 日に日に高まる「Godzilla vs. Kong 」への期待!
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