わたがし

アレックスのわたがしのレビュー・感想・評価

アレックス(2002年製作の映画)
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 最高の映画。2Dで観る3D映画。3Dで観たかったな的なニュアンスではなく、平面でここまで三次元的な感覚になるんだという高揚感があった。誰がどれだけ平易に撮っても映像というものは時間を伴うものだけど、この映画は時間という軸をそのまま画で作ってる。グネグネ動いて、パッと飛び跳ねて、死ぬまでこの感覚が続くんじゃないかというぐらいに停止する。カメラのリハーサルどれぐらいしたんだろう
 脚本は例の如く4ページぐらいしかないらしく、筋自体は大したことないけど演技とストーリーテリングだけで超面白い映画になっている。ハリウッド産の緻密なエンタメ作も「これぞ映画」と思うけど、こういうものもまた強く強く「これぞ映画」と思う。映画は本当に素晴らしいね
 何が見えて何が見えないかという点において、序盤はほとんど何も見えず、終盤になるにつれ見たくないものまで全部見えてしまう。そこからの時間軸をぶっ潰したあのラストにゾクゾクする。
 ほとんどエチュード(どのぐらい俳優に託したかはわからないけど)なんだろうけど、エチュードシーンに必ずある「ストーリーが進んでもいないし感情も停止している」みたいな超つまらない瞬間が全くない。カメラの力もあるんだろうけどずっと激しく情緒が揺れ動いているし、他愛のないやりとりも全ての瞬間に意味があると思わされる。それもまたテーマに直結しているし、本当に凄い映画。
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