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処刑軍団ザップのbackpackerのレビュー・感想・評価

処刑軍団ザップ(1970年製作の映画)
3.0
切・株・映・画!

切株映画とは、映画で人体が破壊・切断される描写を指す言葉です。
映画評論家の高橋ヨシキさんと中原昌也さんのお二人が定義付け、"切株派宣言"の布告により、世に知られることとなりました。(詳しくは、洋泉社刊行『ショック!残酷!切株映画の世界』をご一読ください。)

そんな切株映画の一つとして有名な『処刑軍団ザップ』をレビューしていきたいと思います。

ーーー【あらすじ】ーーー
田舎町にやってきたカルト・ヒッピー集団"サタンの息子たち"によって姉をレイプされた幼い少年ピート。怒り心頭で乗り込んだ獣医の祖父はLSDを食わされ返り討ちにあってしまう。
ピートは、姉と祖父の復讐のため、狂犬病の犬の死骸から抜いた血をミートパイに混ぜ、腐れヒッピー共に売りつけた。
首尾よくミートパイを食べたヒッピー達だったが、頭がイカれた彼らは更に凶暴化し、町に暴虐と血の雨を降らせ始め……。
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本作は、ヒッピームーブメントに終止符を打ったマンソン・ファミリーの要素を取り入れたヒッピー映画の中でも、異彩を放つキワモノです。
ヒッピーコミューンのマンソン・ファミリーとその首魁チャールズ・マンソンについては、『ヘルター・スケルター』や『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』等でも語られています。要するに、カルト教団物のミームの権化的存在です。
『マンディ地獄のロード・ウォーリアー』なんかも、影響ダダ漏れ映画ですね。

閑話休題

なぜ異彩を放つのか?それは、マンソン・ファミリー的なキチガイカルト教団物に、「狂犬病に感染しイカれた人間が暴走して、地獄絵図が生まれる」という感染パニックを掛け合わせたことです。
監督曰く、狂犬病で村が全滅したという実話に、マンソン・ファミリーを足してみたとのことですが、このキチガイ爆発な登場人物の暴れっぷりは、見ていていっそ清々しいほど。
ジョージ・A・ロメロ監督の『ザ・クレイジーズ』にも影響を与えたと言われているのが納得ですね。


とはいえ本作は低予算映画でありまして、その中身はそれ相応です。
低予算ぶりが伺える要素としては、70分くらいの川のシーンで、撮影スタッフが画面左端に映り込んでしまっていたり、使用している剣や斧が本物というとんでもなく危険な現場だったり、とかですね。
代わりと言ってはなんですが、撮影現場がリアルゴーストタウンだったため、カルト教団の滞在先のホテル(廃屋)やらで展開する破壊や、民家への放火(からの謎の焼身自殺)シーンはマジもんです。
あとは、カルトの犠牲となったネズミたちは、傑作ネズミ映画『ウィラード』及び『ベン』で登場するネズミと一緒とのことで、そんなところは見て損はなし。
ま、そんなネズミを串に刺してバーベキューにするわけですから、このカルト共のイカれ具合は推して知るべしですけどね。

なお、本作の邦題『処刑軍団ザップ』は、当然ながら本作自体と微塵も関係ありません。当時の配給会社宣伝マンのセンスが光る、珍邦題の一つです。
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