マンボー

プラダを着た悪魔のマンボーのレビュー・感想・評価

プラダを着た悪魔(2006年製作の映画)
3.6
憧れる人の多いファッション業界という特殊な世界の、華やかさと陰湿さとを描く映画かと思ったら、ただただブラックな上司と環境とに、社会人経験の浅い若者がどう対峙するかを描いた映画だった。

序盤はファッション誌の編集長の秘書でマネージャーという、これまでほとんど知ることのなかった世界と、その仕事内容や役割に興味をそそられ大いに惹きつけられたものの、その環境や役割を呑み込み、消化してしまうと、終盤はやや予定調和的に収斂されて、結局はメリル・ストリープの特殊な業界の特殊な人物へのなりきりぶりと、アン・ハサウェイの文系知的地味少女から、最先端ブランドレディへの大変身が見どころだったのかなぁと思うしかなかった。

正直にいって、物語の起承転結なんて考えすぎても仕方なくて、結果としてそうなっているものぐらいに思っているけど、それでもあえてこの使い勝手のいい四文字熟語を利用するなら、起承は上々で期待のハードルは上がったけれど、転が弱めで、結はあまりに想定通り。作り手の自我や訴えのオリジナリティと主張の弱さに、後半感情は全く揺さぶられなかった。

ファッションやブランド、流行に興味がある人、アン・ハサウェイにかっこよさや憧れを感じる人にはオススメ。

ブラックな環境を経験した人なら共感できるし、経験がない人は想定ができるので、企業に属している人や、これから属するであろう人は、きっと観て損はない。

ただただ映画や物語自体が好きな人、創作に関わる人には、その高めの評判に比べて、かなり物足りない作品になると思うけど、それでもこの作品の何が多くの人を惹き付けたのかを考えることは、おそらく必要なことだと思う。

なるほどそう考えると、個人的に好きな作品ではないし、人に勧める気もないのに、ごく必要とされている映画ということになるのかなぁ。