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紀元前1万年のbackpackerのレビュー・感想・評価

紀元前1万年(2008年製作の映画)
3.0
今度の破壊は……紀元前1万年!

『紀元前1万年』は、簡単に言えばローランド・エメリッヒ版『アポカリプト』(+『ロード・オブ・ザ・リング王の帰還』等の叙事詩)。
マンモス狩りとピラミッド建築がミックスされた不思議な設定で、見るものを惑わせる奇抜極まる作品です。

ローランド・エメリッヒ監督といえば、大作ディザスター映画の名手として知られますが、この方がどんな人物なのか、簡単におさらいしたいと思います。

ローランド・エメリッヒ、1955年西ドイツのシュトゥットガルド生まれ。
77年にミュンヘン映画アカデミーに進学し、同年公開の『スター・ウォーズ』に影響を受け監督を志すようになります。
記念すべきデビュー作『スペースノア』から、ドイツ活動期及びインディーズ時代一貫して、少額予算ながら大作志向というSF作品を作り続けます。
ハリウッドデビュー作は、ジャン=クロード・ヴァン・ダムとドルフ・ラングレン主演の『ユニバーサル・ソルジャー』。スーパー・ヴァンダミック・アクション全開で、そこそこのヒットを飛ばし、良いハリウッドデビューとなりました。
波にのったエメリッヒは、2万人のエキストラを動員した『スターゲイト』(後にドラマシリーズ化)で初週興行ランキング1位になり、作品も大ヒット。次いで『インデペンデンス・デイ』が巧みなプロモーションもありメガヒット。『GODZILLA』『パトリオット』と着実にステップアップしますが、同時にスケールの壮大化に歯止めがかからなくなります。その結果が、『デイ・アフター・トゥモロー』です。

話の壮大化が行き着いた果が、地球丸ごと氷漬け。さてその後は?ということで、製作されましたるは本作『紀元前1万年』です。
(この後、『2012』で再度地球を終わらせ、メル・ギブソンにマヤ族というテーマを先にやられた悔しさを2作がかりで晴らしました。)
学のない人間のため、有史以前の歴史をよく知りませんが、それにしたって説明のなさには参ります。「ここはどこ?彼らは誰?」状態です。設定が分かりづらいのは、あえて観客に情報を与えるべきではないとの判断なのか、はたまた時代考証等真剣な下調べをしてないからなのか。

あまり真面目に考えなければ、これぞまさに「なんちゃって大昔」とでも言いましょうか。
どうだ!原始時代だぞ!と、作品が放つ雰囲気を楽しむ映画と言ってしまえばそれまで。
囚われの姫を救いに行く王子という鉄板プロットが、土埃と汗にまみれた半裸男に置き換わっただけで、この破壊力。
素晴らしい。実に素晴らしいボンクラ映画。
エメリッヒ監督の職人監督感が真摯に伝わってきて、とても好感触です。
また、いつもなら出演者をあっさり殺して退場処分にしがちなエメリッヒ監督が、珍しく抑えめにかつ意味のある犠牲風にしている点も、柔らかい印象でいいですね。


とはいえ、『アポカリプト』に先んじられたこともあり、正直イマイチ感が隠せない映画であることは間違いありません。
頭空っぽにしてカウチに沈み込み、でかいコーラを携えて見るポップコーン・ムービーの一つとして、オススメさせていただきます。
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