クシーくん

何がジェーンに起ったか?のクシーくんのネタバレレビュー・内容・結末

何がジェーンに起ったか?(1962年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

ヒッチコックにハマっていた時期、似たような映画を探していて「これは?」と友人に勧められて観た一作。当時はその凄さがイマイチ分からなかったが、今は分かる。観ている最中鳥肌が止まらない。

落ちぶれたかつての大女優が狂気にかられるという意味では「サンセット大通り」を髣髴とさせるし、イかれたオバハンに介護されるのは「ミザリー」の先駆にも思えるが、サンセット大通りよりも狂気が増しており、ミザリーと比較して肉体的暴力が控えめなのに圧倒的に怖い。
同じくベティ・デイヴィスが主演を務める「八月の鯨」とシチュエーションこそ似ているが、あちらは平和な雰囲気のまま終わったのに対し、こちらはサイコスリラー&ヴァイオレンス。

車椅子が必要な要介護者が2階に住まわされるという既にえげつない虐待を受けてる訳で、物語が始まった時点でクライマックスなんだよな。何故こんなになるまでヤバすぎる妹を放置してしまっていたのか?に始まり、種々の疑問が作中に頻出する。何故ブランチは声をあげなかったのか?インコを殺されて食事に出された時点で、メモを窓から投げる際に声を張り上げるべきだったのでは?あるいは2度目に家政婦が来た時騒ぐべきだったのではないか?等の全ての疑問をあの抒情的とすら言えるラストシーンの種明かしで綺麗に回収する見事さ。伏線の張り方が細やかで実に丁寧。

映画は①幼少期 ②ブランチ全盛期までのアバンタイトルと、③現在で構成されているので、それらの空白期間に何が起ったのかは作中の会話などから推察する他ないのだが、ジェーンはブランチを介護し始めた時から最悪な女だった訳ではなく、徐々に関係が悪化していったのだろう。幼少期のワガママぶりを見てると子供の時からああいう風だったようにミスリードされるが、若い頃の二人はもっと仲が良かったんだと思う。幼いジェーンが高慢ちきなりに姉を気遣う姿勢を見せる辺りからも、それが窺える。

姉を半身付随にしてしまった負い目から抑制されていたストレスが、長年に渡る付きっきりの介護生活での不満によって表面化し、老化とストレスによる狂気に蝕まれたことで幼児退行と悪意が芽生え、ファンレターとブランチが主演した映画の再放送が元々脆い上に崩れかかっていたジェーンの精神にトドメを刺した。
だから本作は怖いのと同時にとても切ない。
知らないとは言え隣の奥さんの行動が逐一裏目に出てもどかしい。

小鳥やネズミを食事に出してゲラゲラ笑うシーンも怖いが、やはり嗄れた声で「パパに手紙を」を歌うベティ・デイヴィスの不気味さよ。

全然関係ないが、パニック状態のブランチが車椅子でグルグル回る俯瞰ショット、シンプソンズだかでパロディされてたのを思い出して怖いシーンなんだけどちょっと笑ってしまった。
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