マサキシンペイ

ヒミズのマサキシンペイのレビュー・感想・評価

ヒミズ(2011年製作の映画)
3.0
園子温入門編と言った感じ。
染谷将太の演技のキレっぷりにグッとくるところはあるものの、園子温らしい設定のチープさが悪い方向に働き鼻に付く印象は拭えない。
特に「東日本大震災」で被災した地域が舞台というのが頂けなかった。

もちろん映画の構造上、被災地である狙いは分かる。決して欲に溺れて破産したわけではなく、運命の不条理によって生活の全てが台無しになるという点で、毒親に虐待の末、見放され孤立無援となった、染谷将太演じる中学生の住田と、被災した後に住田のボート屋の付近でホームレス生活を行う人々は共通の境遇にあると言える。同じような境遇にある住田とホームレスのメンタリティのズレが物語の中心を流れる。
震災の傷に触れないように弱々しくも楽しく過ごそうと共同生活を営もうとするホームレスの笑顔がかえって、ひたすら自暴自棄で非行に走る住田の痛みを照らし出している。

しかし「東日本大震災」という極めて時事的な設定でありながら、被災者のメンタリティが繊細なドキュメンタリーではなく、物語の構造を多重化するための単なる仕組みとしてしか扱われておらず、陳腐さがまとわりついてくる。こういう扱い方はあまりセンスが良くないと思う。
マサキシンペイ

マサキシンペイ