じゅ

007/オクトパシーのじゅのネタバレレビュー・内容・結末

007/オクトパシー(1983年製作の映画)
3.4

このレビューはネタバレを含みます

オクトパシーて味方に回るんだな。意外だった。大概タイトルに使われる固有名詞ってキーアイテムか敵の名前と思ってたから。


ゴーゴル将軍も丸くなったな。今回はオルロフっていうソ連の別の将軍殿が敵に回ってゴーゴル将軍は制止しようとする立場になったか。いずれにせよデタントが終わって新冷戦真っ最中なかんじが出てた。
米軍の核爆弾に酷似のものを造って米軍基地で事故を装って爆発させるっていう謀略は、レーガンの核軍拡路線を受けてなんだろうな。1982年には反核平和運動が盛り上がりに盛り上がって、第二回国連軍縮特別総会に向けた署名活動があったりしたそう。オルロフ将軍が狙った西側の反核運動の加速ってのはそんな情勢を反映してたのかな。本作の公開が直後1983年だったってことは、案外後乗せの設定だったりもしたのかも。

オクトパシーの組織も興味深いとこ突いてたんだろうな。男子禁制で、東南アジアの若い女性を雇ってるみたいな話だったか。
植民地支配から独立したくらいの頃の東南アジア諸国は、先進国の資本とか技術を取り入れて工業化を進めて行った。工業化の波の中で女性は繊維、履物、衣料製造等の労働集約型産業のための単純・未習熟労働者として導入されていく。男性にばかり教育を付けたがった伝統というか思想だったり、「女性は従順で使いやすい」との偏見があって、男性との賃金とか昇進に関する差別が深刻だった。さらには政府としては経済発展に集中して社会福祉に予算を使いたくなかったから、女性に労働のみならず家庭の諸々(家事、育児、介護)も求めた。
そんなようなことを2018年にアジア経済研究所から発行された川村晃一編『東南アジア政治の比較研究』調査研究報告書の第4章「東南アジアにおけるジェンダー問題の発生と展開」で田村慶子さんが解説してた。
そんな中、1979年に国連女性差別撤廃条約(CEDAW)が採択された。長い歴史の中で豊穣されてきた「面倒はオンナに押し付けろ」的観念と、外圧による意識改革との戦いが始まった頃に本作の製作が始まったんだと思う。


今回もQグッズ良かった。まさか「ペンは剣よりも強し」を文字通りの意味で実現するとは。
ガソリンで飛べる主翼折り畳み式の小型飛行機もイカしてたけど、なんかもうクライマックスのブリティッシュもりもりバルーンでどうでも良くなったわw

敵キャラはどうも俺の頭の中にジョーズくんが残ってるせいで薄く見えたんだよな。
カマル・カーンの右腕のターバン兄貴はカーンのダイスを握り潰したとこがピークだったかも。飛行機から落ちる最期、ジョーズくんなら生きてた。
丸鋸ヨーヨーの彼はちょっと良かったかも。真上じゃないと実力を発揮できない愛嬌を表情でカバーするタイプ。

アクションに現地色を取り入れるってのはそういえば珍しいかんじする。リクシャーカーアクションとか。ウィリーしてたぞ。近年どこもかしこも国際化みたいなことで良くも悪くも均質化してきてるってのが、もしかしたら近年そういうの見かけない事情なのかもなあ。
まあどっちが良い悪いって話でもない。どっちも良いと思う。
じゅ

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